Book

究極の秘密主義が生み出すAppleという組織 『インサイド・アップル』 アダム・ラシンスキー

"インサイド・アップル" (アダム・ラシンスキー) Appleの製品やスティーブ・ジョブズについて書かれた書籍や文章はたくさんあるが、Appleという組織について情報はほとんど目にしたことがない。表面的に判断できる株式の時価総額を除けば、ジョブズの言葉以…

メールだからこそ気持ちが揺らぐころもある 『北風の吹く夜には』 ダニエル・グラッタウアー

"北風の吹く夜には" (ダニエル グラッタウアー) この書籍は『本が好き!』から献本いただきました。 メールで感情を伝えるのは難しいよね。特に恋愛感情は。キーボードから叩きながらたくさんの形容詞を駆使しても心の微妙なニュアンスはなかなか表現できな…

まるでイコライザーでどの周波数帯もプラスにしてしまっている音楽のようだ 『六つの手掛かり』 乾くるみ

"六つの手掛り (双葉文庫)" (乾 くるみ) 「ミステリー」に何を期待するか・・・トリックか、それともストーリーのロジックか。そこに正解があるわけではなく、それは読者それぞれの好みに左右されるポイントだろう。更にそれらの仕掛けが精巧に埋め込まれて…

現代版ジェームズ・ボンドを完全に描ききってる 『007 白紙委任状』 ジェフリー・ディーヴァー

"007 白紙委任状" (ジェフリー・ディーヴァー) 『007』を聞けば、おそらく多くの人は映画007シリーズのジェームズ・ボンドをイメージすることだろう。さて、その中で何人の人がイアン・フレミングの原作を読んだことがあるだろうか。なんでこんなことを書…

就活している学生だけじゃなく、若者の必読書と言ってもいい 『就活に「日経」はいらない』 成毛眞

"就活に「日経」はいらない" (成毛 眞) タイトルはキャッチーだけど、内容はいつもながらの"成毛節"炸裂。就活を通して自分自身の未来をどう考えるかが大事であって、「日経は必須」的が安易な考え方を否定しているに過ぎない。成毛さんの言葉を借りれば、 …

出だしの言葉は大事だねえ 『モップの魔女は呪文を知ってる』 近藤史恵

"モップの魔女は呪文を知ってる (実業之日本社文庫)" (近藤 史恵) 近藤史恵さんって作家として器用なひとだなあ、って思う。だって、たくさんのシリーズものを書きながら、そのシリーズのキャラを進化させてる。今回の『モップの魔女は呪文を知ってる』はタ…

前作よりも更にバージョンアップして登場 『ドラゴン・ティアーズ -龍涙 池袋ウエストゲートパークIV』 石田衣良

"ドラゴン・ティアーズ 龍涙―池袋ウエストゲートパーク〈9〉 (文春文庫)" (石田 衣良) ふと『池袋ウエストゲートパーク』の魅力ってなんなんだろう・・・と考えてしまった。今回の作品で九作目になるこの人気シリーズは発売されれば何の疑いもなく手に取り、…

決して広告の話ではなく、どう仕事に向き合うべきかを考えさせられる一冊だ 『デイヴィッド・オグルヴィ 広告を変えた男』 ケネス・ローマン

"デイヴィッド・オグルヴィ 広告を変えた男" (ケネス・ローマン, Kenneth Roman) この書籍は『本が好き!』から献本いただきました。 朝起きてTVのスイッチを押してもPCの電源をONにしても最初に押し寄せるのは「広告」である。電車に乗ってふと目を上げれば…

偶然の出会いには学ぶべきことが多かった 『サイゼリヤ革命―世界中どこにもない“本物”のレストランチェーン誕生秘話』 山口芳生

"サイゼリヤ革命―世界中どこにもない“本物”のレストランチェーン誕生秘話" (山口芳生) 先にこれは書いておいた方がいいかなあ。本当のことをいうと、この作品は間違って買っちゃったんだよね。「そんなこと・・・」といわれるかも知れないけど、電子書籍だと…

「心の中で感じる周波数が違う」 8人の作家によるアンソロジー『あなたに、大切な香りの記憶はありますか?』

"あなたに、大切な香りの記憶はありますか? (文春文庫)" (阿川 佐和子, 角田 光代, 高樹 のぶ子, 熊谷 達也, 重松 清, 小池 真理子, 石田 衣良, 朱川 湊人) 記憶は案外いい加減なもので過去の出来事は意外と自分に都合が良いように格納されていることが多い…

昭和な世界にようこそ! 『道徳不要 俺ひとり』 白川道

"道徳不要 俺ひとり (幻冬舎文庫)" (白川 道) 売上至上主義、効率重視な世知辛い世の中だからこそ憧れる白川道の世界。ヒリヒリするような毎日を過ごしながらも一本、筋が通ったような生き方。そんな世界が繰り広げられるのが彼の小説の特徴である。しかし、…

ラーメンを食べようか、それともこの本を買おうか・・・悩む前に買った方がいいよ 『ラーメンと愛国』 速水健朗

今回はどんなテイストで書こうかちょっと悩んでる。前回のレビューは完全に本のテイストの延長だったので、今回同じように書くと結構堅めになってしまう気がする。そういう意味では「意識の変温動物」なのかも知れない。こんなことを書いているとまた前置き…

すみません、面白すぎてレビューで中身まで書けませんでした 『テレビは余命7年』 指南役

"テレビは余命7年" (指南役) この書籍は『本が好き!』から献本いただきました。 そう、共感。作り手が志を持って、本気で取り組んだものは、必ずや視聴者の心に届く。 視聴率より志。いや、志のある作品は、そのうち視聴率もついてくる。今はソーシャルメ…

メモで大事なのはそこじゃないでしょう 『仕事は「捨てメモ」でうまくいく』 相葉光輝

"仕事は「捨てメモ」でうまくいく" (相葉光輝) いつもお世話になっている『本が好き!』からのメールに「書評コンテスト」なるものが書かれていて、思わず脊髄反射で購入した。中身も目次も一切見ずに・・・。結果は、超イマイチだった。一つは役に立つこと…

世間一般で言われていることが正しいとは限らない 『本の現場』 永江朗

"本の現場―本はどう生まれ、だれに読まれているか" (永江 朗) 毎日のように読んでいる本、でもその本を取り巻く環境については知っているようであまり知らない。まあ、知らなくても本を読んで楽しむことはできるし、好きな本屋さんに足を運べばいくらでも新…

読み手がいて初めて成り立つストーリー 『どちらかが彼女を殺した』 東野圭吾

"どちらかが彼女を殺した (講談社文庫)" (東野 圭吾) 推理小説の一番の蜜は謎解きをして犯人を突き止めることだろう。トリックを見破り、アリバイを崩し、運命としか言いようがない偶然などが重なりストーリーはドラマ化していく。定石というか、一番基本と…

マーケティングの本と思いきや、進化心理学の本だった 『友達の数は何人?』 ロビン・ダンバー

"友達の数は何人?―ダンバー数とつながりの進化心理学" (ロビン ダンバー) この書籍は『本が好き!』から献本いただきました。 久しぶりに苦労して読み終えた一冊かも知れない。ページ数でいえば250ページ程度なので決してボリュームが多いわけではない。さら…

「成功」ってなんだろうか・・・ 『人生を変える!夢の設計図の描き方~1年後に「自分らしい生き方」ができる方法』 鶴岡秀子

"人生を変える!夢の設計図の描き方~1年後に「自分らしい生き方」ができる方法" (鶴岡 秀子) 「成功」、「夢」、「習慣」って自己啓発本によく使われるキーワードだよね。僕もこれまでかなりの数、この分野の本を読んできた。ちょっと食傷気味になったので最…

これは良書、経験からのメッセージは心の奥に伝わる 『「まわり道」の効用 -画期的「浪人のすすめ」』 小宮山悟

"「まわり道」の効用――画期的「浪人のすすめ」 (講談社プラスアルファ新書)" (小宮山 悟) 正直に言えばそんなに期待はしていなかった。手にした一番の理由は高校の一つ上の先輩だから・・・程度。しかし読み進めているうちに、「これ、意外といいかも!」(…

ビジネス以外でもたくさんヒントはあると思うよ 『ユダヤ人大富豪の教え -ふたたびアメリカへ篇』 本田健

"ユダヤ人大富豪の教え ―ふたたびアメリカへ篇" (本田 健) この書籍は『本が好き!』から献本いただきました。 米国でお金に関する手ほどきをユダヤ人のゲラー氏からうけ、自分のビジネスを立ち上げ、順調に成長していたケン。実はそう見えていただけで、本…

3作目は経済小説という枠を超えている 『レッドゾーン』 真山仁

"レッドゾーン(上) (講談社文庫)" (真山 仁) ハゲタカ、そして「ゴールデンイーグル」の異名を持つ男 鷲津雅彦が帰ってきた。かつて「日本を買いたたく」と豪語した鷲津に新たな敵が現れる。これまでとは違う世界規模での戦い、そしてそのターゲットにされ…

#abk1_1 概念モデルという考え方 『誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論』 D.A.ノーマン

"誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)" (ドナルド・A. ノーマン, D.A. ノーマン) 長谷川恭久さんが立ち上げた「Automagic Book Club」に乗っかってみよう、ということでD.A.ノーマンの『誰のためのデザイン? 認知科学者のデ…

10作目はこれまでの作品の総決算 『絆回廊 新宿鮫X』 大沢在昌

"絆回廊 新宿鮫Ⅹ" (大沢在昌) 「だって、あんたは新宿鮫なんだぜ」 晶のこの言葉が新宿鮫第十作目『絆回廊』のすべてを物語っている。これまでの鮫島が過去に終止符を打つ。そして新しい展開へと。 この『絆回廊』はこれまでの作品と違い、かなり過去のエピ…

割り切れないいろんなものがあって「現実」なんだよね 『まほろ駅前多田便利軒』 三浦しをん

"まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)" (三浦 しをん) 試しにGoogleで「便利屋」と入力して検索したら約2450万件という結果で、Google Adwords(入力した言葉に対応した広告ね)も上にも横にも表示され、結構入札されているのが分かる。つまり「便利屋」のニー…

本当に激安がいいのか、って考えさせられる 『1円家電のカラクリ0円・iPhoneの正体―デフレ社会究極のサバイバル学』 坂口孝則

"1円家電のカラクリ0円・iPhoneの正体―デフレ社会究極のサバイバル学 (幻冬舎新書)" (坂口 孝則) 『最初の取引だから特別価格で・・・』ここ数年ずっと違和感を感じた台詞なんだよね。特別価格=ほぼ利益がない、あるいは今回は利益が無くても・・・というニ…

ただのカラクリ暴露本じゃない 『ゴルフ場のカレーはなぜ高級ホテル並みの値段なのか』 嶋崎潤一

"ゴルフ場のカレーはなぜ高級ホテル並みの値段なのか (幻冬舎ルネッサンス新書 し 2-1)" (嶋崎 潤一) 本書のまえがきに 多くの社会や経済での出来事も実は不動産の切り口から見るとまるで違って見えたりもしますし、社会経済も世界も、実は不動産から見なけ…

『天使はモップを持って』 近藤史恵

"天使はモップを持って (文春文庫)" (近藤 史恵) きっとどんな地域の学校にも都市伝説やら怪談話などがあって、小さい頃は興味津々という気持ちとちょっと怖いって気持ちが入り交じりながら友達と噂話をすることが楽しかった出来事の一つだと思う。大人にな…

正直にいいます、今回も泣きました 『キネマの神様』 原田マハ

"キネマの神様 (文春文庫)" (原田 マハ) すみません、また泣いてしまいました。でもね、いつもの本を読んで流した涙ではなくて、映画館でいい映画を観た後に流す涙だった。エンドロールが流れ、バックで音楽が聞こえる中で心地いい疲労感と「この状態の顔は…

頭の中にあった「編集」の定義が整理された 『編集進化論 -editするのは誰か?』 仲俣暁生+編集部

"編集進化論 ─editするのは誰か? (Next Creator Book)" (フィルムアート社) この本は千駄木の往来堂書店に行った時に購入した一冊だけど、昨年の後半ぐらいから気になっていた『編集』というキーワードを見事に言い当てている内容だった。どんどん新しいメ…

蓮丈那智の魅力を分析してみると 『凶笑面』 北森鴻

「GWには普段できていない読書をしよう」と思った人は多いと思うけど結果は如何だったのでしょうか。なかなか普段できていないことを連休だからといって実行しようと思っても難しいと思います。それよりも過去に読んだ作品をもう一度読み返す機会にした方が…