役割を終え、「SPIGA」が閉店


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2009年8月22日で僕が一番古くからお世話になっているBARがその役割を終える。26歳の頃からだから、かれこれ15年以上の付き合いになる。原宿という若者の街にあるにも関わらず、落ち着いた雰囲気の店である。表には看板も無いので、誰かに紹介されないと基本的には訪れるチャンスがない。実はマスターの兼松さんとは不思議な縁がある。
僕が高校生の頃、よく午後の授業をさぼって表参道に面した喫茶店で表参道を歩いている人を眺めていた。別に不良でも、引きこもりでもなく、ただ目の前の状況から感じ取れることから推論することが好きだったのだろう。メモを取っていたわけではないが、2時間ぐらいそうすることがよくあった。お店はいつも決まっていて、ピアザビルのカフェだった。実は兼松さんはこの時期にここで働いていた。とはいえ、お互いに記憶にあるわけではない。お互いの過去の話になった時にビックリした思い出がある。大学生になってからは原宿/青山/渋谷の広範囲なエリアは僕にとって気の利いたものが手に入る、いつもワクワクさせてくれるお店がいっぱいあった。当時は竹下通りだけは中学生でいっぱいだったけど、脇道を入ると比較的年齢が上の人たちにも指示されるような店があったのでそれなりに幅広い層の人たちが原宿を訪れていた。
バブル崩壊以降は完全に若年層向け、あるいは一時期のビジネスを展開する場となってしまった原宿は完全に大きなイベント会場と化してしまい、街の魅力はどんどん落ちていった。そんな場所でも「SPIGA」は営業を続けてきたものの、役割を終えた。兼松さんとも話したことでもあるけど、店は周りの外的要因、お客様の環境、年齢など常に変化にさらされることには違いないが、原宿はあまりにも変化が大きかった、ということも大きな要因と思われる。もちろん原因は外的なものだけではないが・・・・。
明治神宮前駅(東京)
最後にここのメインテーブルに飾られていた花を紹介したい。入口の正面に位置するメインテーブルにはいつも豪華な花が飾られていた。ここのテーマは「白い花」で、毎週新しいものがオープン以来飾られ続けてきた。多くのお客様が訪れていた時期には、このメインテーブルに座るためには暗黙の資格が必要であり、客側もなんとなく察して座る位置を確かめていた。本当にこの花は見事で、「白い花」のためほとんどはカサブランカなどユリ系の花が生けられ、この香りが凄く好きだった。僕も初めてこのテーブルで座った時には、ちょっとだけ緊張した記憶がある。それぐらいこの場所は特別だった。
もうこの空間が無くなると思うと本当に寂しさだけが残る。最後に訪れることができたことが幸いだった。兼松さん、お疲れさまでした。