オーディオブックで『奇巌城』


"[オーディオブックCD] 奇巌城" (モーリス・ルブラン)


昨日のエントリーで書いた『奇巌城』は敢えてオーディオブックで試してみた。ある意味、電子ブック、電子書籍の一つの形でもあるオーディオブックはPodcastの延長上にあり、試してみたい、と思いながらもなかなかチャンスが無かったので、ちょうどいいきっかけになった。


オーディオブックは朗読の形を採っているが、『奇巌城』は意外とセリフが多いので何となくラジオドラマのような感じで楽しむことができる。小学生の頃、お布団にもぐりながら夜にラジオドラマを聴いていた記憶がある。ぼんやりだけど、確か江戸川乱歩の作品だった気がする(残念ながら作品名までは覚えていない)。TVよりも想像する分だけ、緊張感や恐怖感が生まれ、ドアが「ギィ〜」と鳴る音には一瞬ビクッとした。最近では「ラジオを聴く」ということも無くなったので、ラジオドラマが今でも存在しているのどうかは分からないが、貴重なコンテンツであることは確かだろう。


このオーディオブックの『奇巌城』は3時間ちょっとの作品で、「何かをしながらは・・・」ちょっと難しいので寝る前や電車の中で聴いていた。正直言えば、予想以上に楽しめた。最近ではビジネス書のオーディオブックも多数出版(?)されているが、先にも書いた通りラジオドラマ的な要素もあるので小説の方が向いているのではないか、と思った。


一方、文章も古典的なこのルブランの作品を音声で聴き、内容を理解するには予想以上に知識が必要であることが分かった。実際に本を読むのと違って、どんどん話が流れていってしまうのでちょっとだけ戻って再確認するには不便である。そのため、難しい言い回しの意味が理解できたり、土地勘や歴史がある程度理解していないと、せっかくの面白さも半減してしまう。



"奇巌城 (講談社文庫)" (逢坂 剛, モーリス ルブラン)


"奇巌城 (シリーズ怪盗ルパン)" (モーリス ルブラン, 南 洋一郎)

次はやっぱり子どもの頃に読んだ『ポプラ社』版を読んで、次に『逢坂剛』版を読んでみようか。今回、オーディオブック版『奇巌城』でストーリーを改めて理解して思ったこと。アルセーヌ・ルパンは、時として人を殺めることもあるが自分の仕事に美学があること、冷静な中にも非常に人間くささが同居していること。そして、たとえ敵であっても紳士であることが、この作品のファンを作り続けている源流なのかも知れない。