読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

この本でプレゼンの方向が決まった 『デザイン思考が世界を変える―イノベーションを導く新しい考え方』 ティム・ブラウン




"デザイン思考が世界を変える―イノベーションを導く新しい考え方 (ハヤカワ新書juice)" (ティム ブラウン)


半年以上僕の本棚にあってそのタイミングを待ち続けた一冊。別に意図的に読まなかったわけじゃなく、ただなんとなく手にせずそのままになっていた。しかし本当に面白いもので必要な時に必要なものに巡りあう。たとえそれが目の前にあっても・・・。


 


本書はIDEOのCEO ティム・ブラウンによる作品でIDEOに於ける数々の経験に基づきながら論理を展開している。タイトルにも使われている『デザイン』は広義のデザインなので所謂デザイン関係の仕事という時に使われる『デザイン』ではなく、現代の多くの人が仕事で直面することにフォーカスしている。また『デザイン思考』としているところがミソで、企画やアイデアを考えることが多い人には特に向いていると思う。僕もこの本にはかなりの箇所に付箋を付けた。そのいくつかを紹介しながらこの本の魅力を書いてみたい。


 



デザイナーたちは、ビジネスの実務的な制約の中で、人々のニーズと利用可能な技術的資源を結び付けようと模索してきた。つまり、人間的に望ましい物事と、技術的・経済的に実行可能な物事を結び付けることで、今日のような製品を生み出してきたのだ。しかし、デザイン思考はそれだけにとどまらない。自分がデザイナーだと自覚したこともない人々にデザイナーの道具を手渡し、その道具をより幅広い問題に適用するのが、デザイン思考の目的なのだ。


序盤に出てくるパラグラフだけど、概ね著者のティム・ブラウンが定義する『デザイン思考』が表現されている。若干堅苦しい表現にはなっているが、「制約」、「技術的」、「経済的」、「実行可能」がすべて満たされる必要があることに注目したい。つまり、何かが欠けても成り立たず(製品として非常に優れていても価格が異常に高ければ利用者がいないように)、アンド条件で満たす必要がある。


 



イノベーションは三つの空間に分けて考えることができる。「着想(インスピレーション)」は、ソリューションを探り出すきっかけになる問題や機会。「発案(アイディエーション)」は、アイデアを創造、構築、検証するプロセス。そして「実現(インプレメンテーション)」は、アイデアをプロジェクト・ルームから市場へと導く行程だ。チームがアイデアを改良したり、新たな方向性を模索したりするうち、プロジェクトがこの三つの空間を何度も行き来することもある。


イノベーション」や「イノベーティブ」という言葉はまるで魔法のように感じるキーワードだけど(書店のビジネス書コーナーにこのキーワードが付いた本がたくさんあることでも分かるように)、3つの空間(フェーズと呼んだ方が馴染みやすい気がするけど)があると説く。特にアイディエーションの中に『検証するプロセス』があることに着目したい。アイデアのシーズを企画に落とし込み、そのまま適用するのではなく、『検証』してから市場に投入するという流れである。市場投入してからその結果を検証するのではないところが重要。


 


最初の引用部分で書かれている『制約』についても別の場所にこう書かれている。



制約は、成功するアイデアの三つの条件と照らし合わせると理解しやすい。それは「技術的実現性(フィーザビリティ)」、「経済的実現性(ヴァイアビリティ)」、「有用性(デザイアビリティ)」の三つだ。


 


本書の中ではこのような論理的な話だけではなく、実際のプロジェクトでの事例やその時のメンバーの構成なども詳細に記載されている。それぞれのプロジェクトがデザイナーだけではなく、科学者、マーケター、エンジニアなど立場の異なる人たちの集合体で実行されていることが分かる。多少、普段あまり触れない言葉などもあるが多くの発見に出会えることは間違いない。


 


 


余談だが、早川新書juiceはほとんど制覇しているけどはずれ率が非常に低い。編集者が優秀なのか、良い著者とのリレーションが優れているのか分からないが、多くの新書のような「数打ちゃ当たる」的なシリーズとは違う。