もう少し深く考えると理由は違う気がする

「CanCam」「JJ」が凋落 女性誌売れなくなった理由

宝島社広報課の方のコメントは「雑誌」カテゴリーの中の話としては正しいんだけど、そもそも雑誌そのものの役割というか、立ち位置を考えると今後ますます厳しい環境に向かっていくことだろう。厳しい環境という言葉はちょっと語弊があるかも知れない。過去の数字を基準として考えた場合は厳しく、本来獲得できるユーザ数(≒発行部数)でビジネスが成り立つ構造であれば、そこが着地点になるのではないか。
僕も大学時代や社会人の初めの頃は雑誌に投下していた金額が本当に多かった。男性向けのファッション雑誌などはあまり買わなかったが、女性向けのファッション雑誌、車、TarzanやNumberなどのスポーツ系、流行グッズ系とかなり広範囲に毎週あるいは毎月購入していた。理由は非常にシンプルで、情報ソースが他に無かったからだ。TVも同様で、動画を見たいならばTV、映画、ビデオぐらいで、今のようにYouTubeニコニコ動画もなければ、レンタルショップもDVDやブルーレイではなく、ビデオテープである。かつては流行しているもの、つまりトレンドはマジョリティで、それ以外はマイノリティでどちらかというと格下扱いだったので、多くの人はマジョリティを求め、そのためのツールとして雑誌のような比較的早く情報を入手できるメディアにニーズがあった。また多くの人がそれを求めたので、各社が似たような雑誌を出してもそれぞれにファンが付き、それぞれがビジネスベースに乗る構造になっていた。
インターネットの出現だけではなく、ニーズの細分化(細分化自体は以前にも存在していたが、市民権を得られたという意味で)が進行した結果、それぞれのカテゴリーの母集団が小さくなり、各メディアにもその影響を及ぼしていると思われる。並行して注目すべき点は、雑誌が単純なメディアとして利用されているだけではなく、出版社やあるいは関係者によるECサイトなどを運営することで雑誌そのものがカタログ化している流れがある。その中心プレイヤーはマガシークだろう。一方で、アパレル通販のカタログが従来のモノ中心の構成から段々とライフスタイル中心、あるいはターゲットをピンポイントに絞ったカタログ作りになってきたため、これらのカタログが雑誌しており、近い将来、この二者の線引きはほぼなくなると思われる。
宝島社広報課のコメントに戻ると、読者の目線を理解しようとしていることが伺える。ただし、アパレルの場合、読者(=消費者)は継続購読すれば歳をとるということを忘れてはいけない。また入学、卒業、入社、転職、結婚などいろいろなライフイベントによって、それまでの価値観を余儀なく変更させられることが普通である。
「誰に」、「何を」伝え、「何で」ビジネスをしていくのかを考えると朧気ながらも向かう方向は見えてくるのではないか。もしかしたら「辞める」という決断も必要な選択肢かも知れない。