これも『水商売』か。モノの値段って難しい…


asahi_water


 


たまには本以外のことも書いておこう(メモとして)。


水の値段っていくら?


この夏は暑さのせいもあって毎日500mlのペットボトルのお水を買っていた。好きな銘柄はアサヒの「バナジウム天然水」なんだけど、なぜかコンビニも自販機も「富士山のおいしい水」ばかり。仕方なしで、これを買うことが多かった。でも、これすら置いていないコンビニとかの場合(あるいは目の前の自販機でお水が欲しい時)は、サントリーの天然水<南アルプス>を買ってた。


suntory_water


大体は外で買って飲みかけをバッグに入れ、都度都度飲んでいたので空になったペットボトルはそのほとんどを家に持ち帰っていた。台所に並ぶ空のペットボトルを見ながら、「あ〜無駄なことしてるなあ」と思い、せめてジムに行くときぐらいは水筒に入れて持って行くことにした。そうすると、500mlのペットボトルではなく、2リットルのペットボトル買うことになる。比較的どこででも手に入るサントリーの天然水<南アルプス>を買うことが多くなる。コンビニだと178円とかかなあ。500mlが105円-115円なので、量が4倍で値段は半分以下というのでかなりお得感がある(ただし、持って帰るのに重いけどね)。


実は500mlの値段がアンカーになっていて、178円がかなりお得な気がしているだけだということに気づいた。同じ商品が近所のスーパーに行くと、98円で売っている。500mlじゃなくて、2リットルの方ね。ん?、500mlよりも安いの?、という不思議な現象になっている。当然、自慢げに98円の2リットルのペットボトルを買って家に帰ると、奥さんから「なんで高いお水なんて買ってくるの!」と一言。同じく近所のディスカウント系のスーパーだと68円だそうだ。


いや〜モノの値段って分からなくなりました。『水商売』という言葉がありますが、「アルコール」じゃなくて、「水」もそうなんですね。


 


新しいアップセルの方法か


ついでにもう一つ。


セブンイレブンイトーヨーカドーはかなりの商品をPB(プライベートブランド)で出している。セブンイレブンでは限られた商品だけだけど、イトーヨーカドーで安くすまそうとするとかなりPB商品でカゴが埋め尽くされる。


そんな中で面白い値付けだな、と思ったのは100%果汁のジュース。僕はグレープフルーツのジュースが好きなので、自分でジュースを買う時には自然とグレープフルーツになる。セブン&アイPBのグレープフルーツジュースはセブンイレブンにもあって、500mlを手に取った。これが、105円。その下に1リットル版があって148円。迷わず500mlを置いて、1リットル版を持ち替えました。だって、どうせ1回で飲みきるわけでもないし、ストックするなら1リットル版の方がお得じゃない、って。


juice


ふと冷静な自分がいて、「ああ、アップセルの新しいアプローチかも」と思った訳ですよ。これまでアップセルってプラスの商品を買ってもらうアプローチだったけど、同じ商品を圧倒的な価格差で上位にシフトさせるアプローチ。かつてこんな本が売れたけど、実際に買っている人を見るとTallが多い気がする(つまり真ん中を多く注文する)。


"スタバではグランデを買え! ―価格と生活の経済学" (吉本 佳生)


 


駅前のコンビニで後は家に帰るだけ、というシチュエーションを考えると500mlでも1リットルでもそんな大差はなく、単価アップにはきっと貢献しているはず。これもきっと水モノだからできる技なんだろうなあ。


『水商売』って奥が深い。。。

涙を拭くハンカチを用意した上でお読みください! 『旅屋おかえり』 原田マハ




"旅屋おかえり" (原田 マハ)


 


旅に出かけて、いろいろな発見や新しい出会いに感激することがあるかも知れない。でも、きっと一番の幸せは帰ってきた時に「おかえり」って言ってくれる人がいることなんじゃないかなあ。


 


「元アイドル」と言っても過去を含めて大して売れたわけじゃない。今は「タレント」という肩書きながら、仕事は『ちょびっ旅』という土曜日の午前中に流れる25分番組のみ。芸名が「丘えりか」だから通称は「おかえり」。旅することがこの上なく好きだから、売れなくてもこの番組であちこちに旅することができるだけでも幸せだった。そう、「だった...」と過去形。番組中のちょっとした事故がきかっけで番組は打ち切り、当然唯一の仕事はなくなり、おかえりだけじゃなく事務所も崖っぷち状態(おかえりが唯一のタレントの零細芸能事務所なので)。


 


ひょんなことで「旅屋」という旅代理業をすることになる。旅そのものをに依頼人の代わりとして行き、約束した成果物を納品する。こんな商売が成り立つのか・・・実際に旅をするのが「おかえり」だからきっと成り立つんだと思う。いろいろな事情があってその目的の旅に出かけられない人は結構いるものだろう。ただ、目的地に行って「行ってきました」と言っても決して「成果物」にはならない。「おかえり」が納品する成果物はPricelessなのである。


 


出版順で言えば、この作品の前作は『楽園のカンヴァス』になる。『楽園のカンヴァス』は山本周五郎賞を受賞した作品だ。その延長線のテイストを期待するときっと裏切られる。そう、原田マハは変幻自在な作家なのだから。どちらかと言えば、『キネマの神様』に近い感じだろうか。平易な文章とある意味では日常に近いできことを綴りながら心の琴線を揺さぶる。書けそうで、絶対に書けない文章なのである。きっと作品のきっかけになる出来事を聞いた時(あるいは見た時)以降はかなり前のめりで取材やインタビューをしていると想像する。それも相当に楽しみながら。だから自然のその楽しさが滲みでてくる。


 


この作品の真骨頂は最後の9行に集約されている。


この9行のために約280ページが費やされていると言っても過言ではないだろう。この電話のシーン(実際には独り言調だが)の約束を果たした時の最初の言葉は...。


 


関連:


[Book]正直にいいます、今回も泣きました 『キネマの神様』 原田マハ 2011-05-10

楽しみながら学べる 『なぜビジョナリーには未来が見えるのか? 成功者たちの思考法を脳科学で解き明かす』 エリック・カロニウス




"なぜビジョナリーには未来が見えるのか? 成功者たちの思考法を脳科学で解き明かす" (エリック・カロニウス)


 


普段から書店に行って、いわゆるビジネス書の棚の前にいる時間は非常に短い。仕事上で必要な本ならば、検索機で検索の上、僅か数分の内にその場所にたどり着き、中身をチェックして購入の有無を決断する。他にも理由がある。一部の書店を除き、ビジネス書の平台はテーマや作家から売れそうなものが本としてではなく、情報商材のように並べられ、手に取る気も失せるようなものが並べられている。それでも、時々は手に取り、中身をチェックする時もある。チェックする箇所は決まっている。参考文献のページだ。ここを見れば、自然とその中身のレベルが伺える。今回の一冊はその部分を軽くクリアし、更に以前に読んだダン・アリエリーの『予想どおりに不合理』の執筆に協力した人物の作品であれば失敗はないだろう、との予測をし、作品は期待通りだったと先に伝えておこう。


 


著者のエリック・カロニウスはかつてウォール・ストリート・ジャーナル紙やニューズウィーク誌で記者を務めていたため、世界の名だたる企業家たちと交流を持つことに恵まれた。一方で、先に書いた『予想どおりに不合理』を執筆した際に認知心理学に触れ、その後の作品の執筆時に脳科学について深く知ることでこの作品を書くことを思い立ったという。ページの多くはスティーブ・ジョブズとリチャード・ブランソンとのエピソードを中心に描き、彼らと過ごした時間を懐かしむようなセンチメンタリズムとその後に身につけた脳科学的なアプローチによる考察がセットで展開され、読み手は楽しみながらも新たな知識を得るができるような構成になっている。


彼は最初の段階でビジョナリーをこう定義している。



普通の人が見落とすものを見つけられる人である。


と。そして、ビジョナリーに備わっている能力として6つを挙げている。


  • 発見力

  • 想像力

  • 直観

  • 勇気と信念

  • 共有力


この項目を見た時にふとダニエル・ピンクの『ハイ・コンセプト』を思い出した。




"ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代" (ダニエル・ピンク)


ダニエル・ピンクはその作品の中で今後未来をリードするのは、


  • 何かを創造できる人

  • 他人と共感できる人

  • パターン認識に優れた人

  • 物事に意義を見いだせる人


と予測している。実は本書の発見力が書かれた章の中で興味深い一文を発見した。



いくら多くのパターンを覚えても、ビジョナリーのような洞察力は生まれない。大事なのはパターンの「質」だ。ビジョナリーが探し求めているいるのは、容易に見つけられない類いのパターンである。


そしてこのように結論付けている。



世界を変えるほどの偉業を成し遂げるのに、目の前に存在しないものを見る必要はない。他人が見落としているものを見落とさなければいいのだ。


ここまで読んであらすじを知ってしまった気分になってしまったかも知れない。だが、一番楽しめる部分は書いていないので安心して本書を手にとって欲しい。


僕の中の一番の収穫は、「直観」の章で展開されている「考える時間(そしてその後に購入)と満足度を調査」した実験結果だ。この先、仕事での企画を考える際に意識しなければいけない重要なポイントになった。行動経済学認知心理学に興味があり、ビジネスを自分でドライブしたいと考えている人にはうってつけの一冊だろう。参考文献だけでも一読に値すると思う。

北森鴻の集大成 『邪馬台 蓮丈那智フィールドファイルIV』 北森鴻, 浅野里沙子




"邪馬台―蓮丈那智フィールドファイル〈4〉" (北森 鴻, 浅野 里沙子)


 


北森鴻は自らの死期を予見していたのだろうか。


サブタイトルに「蓮丈那智フィールドファイルIV」が付けられており、間違いなくシリーズの4作目だが、過去の北森作品の集大成と言える内容になっている。過去の蓮丈那智シリーズにも他のシリーズのキャラクターが登場することがあったが、単に登場させるだけではなく、他のシリーズのエピソードも惜しみなく使っていることを考えると、節目として位置付けようと考えていたと推察される。


 


北森作品にはいくつかのシリーズがあり、すべて連続短編の構成になっている。この蓮丈那智シリーズも同様で、シリーズ化されている作品で初めての長編作品であり、故人となってしまった今、シリーズ化作品で最初で最後、唯一の長編作品がこの「邪馬台」である。


もしこの作品を完全に堪能しようと思ったらシリーズもののほぼすべて、つまり10冊以上を読んだ上でこの作品を読む必要がある。もちろん、この作品だけを読んでも十分に楽しめるが登場人物のキャラや立ち位置が重要な役割を担っているので、是非とも過去の作品を読み込んだ上でこの作品に挑んで欲しい。


そしてももう一つ。内容を深く理解する上で、富山和子氏の「日本の米」を先に読んでおくことをおすすめする。全部である必要はないが、少なくとも前半部分を読むことで、「米」、「治水事業」、「製鉄」、「山」、「神」というキーワードの意味を理解することができ、作品を読みながら同時に仮説を立て、作品の世界と同化して読み進めていくことができるだろう。




"日本の米―環境と文化はかく作られた (中公新書)" (富山 和子)


 


本の帯にはこう書いてある。



その「暗号」を読み解く時、隠された巨大な命脈が浮上する。


異端の民俗学者・蓮丈那智、最後で最大の事件。


まるで角川映画金田一耕助シリーズのようなコピーだが偽りはない。ミステリーによくある読者をミスリードするような細工もなく、かなり正攻法な構成になっている。ただし、連続短編癖なのか、雑誌連載原稿をそのまま使っているからなのか、キャラクターの描写シーンが散見される。もし長編作品として一冊の本に仕上げるのであれば、きっとこの部分には手を入れていたのだろう。


作品の内容に関しては一切触れるつもりはないが、このことだけは記しておきたい。この作品は2008年10月〜2010年2月号の小説新潮に連載されたものである。しかし、2010年1月25日に北森氏はこの世を去ってしまった。結末がない状態だったところ、婚約者の浅野里沙子氏と編集部の協力のもと、氏の資料をベースに結末部分を浅野氏が書き、作品を完成させている。だから本当にこの結末だったかは誰にもわからない。だが、大事なのは北森氏が書いた部分と結末の整合性ではなく、思い込めて完成させたことである。だからこそ、こうして僕らは作品に触れることができたのだ。


この作品を読み返す時、きっとまた他の作品が必要になるだろう。関係作品を並べ、時間を確保し、またゆっくりと堪能する時まで、この本の背表紙を眺めることとしよう。

予想通り「Mayu Wakisaka」のライブは至福のひとときだった


DSC00981


 


80年代後半から90年代前半は暇さえあればCDを探しに行っていた気がする。好きなアーティストの曲はもちろん、新しいアーティストを探すのが本当に楽しかった。ジャケ買いは当たり前、プロデューサ繋がりやらレーベル縛りなど、とにかく一時期はかなりの量を買っていた気がする。だから、今でも僕が持っているCDの多くはこの時代のものだし、いま同じことをしたくても肝心のお店がほとんどない。つまり、新しい音楽に出会えるチャンスが限りなく少ない。




"SONY ウォークマン Aシリーズ [メモリータイプ] 32GB ブラック NW-A866/B" (ソニー)


ここ最近の掘り出しもの(?)は「Mayu Wakisaka」。昨年秋に買ったウォークマンA-860に1曲だけプリインストールされていた。別に聴こうと思っていたわけじゃなく、何かの拍子にこの曲がかかった。そして....鳥肌が立った。その曲は『24 Hours』。



 


CDを買おうと思ったらこの曲が入ったアルバムはダウンロードでしか買えない。基本的にダウンロードで買わないんだけど、結局はamazon経由で買ったんだけどね。




"Stars Won't Fall" (Mayu Wakisaka)


他の曲を聴けば聴くほど「ライブで聴きたい」と思っていたところ、下北沢でライブをやるとのこと。で、行ってきました、今日。


「LIVE&BAR COLORED JAM」は30人も入れば超いっぱい状態なお店で、コロナを飲みながらカウンターに背中を向けながら待つことしばし...。定刻の10分遅れで2m先のピアノの前に座って歌い始める。機材の調整は決していいとは言えない状態なのに、理屈抜きで気持ちにいい声が響き始める。CDで聴いていた時のイメージは、あまり広くない場所でマイクを通した声だけじゃなく、生の声も聞こえるくらいのところが一番良さを感じる、と思っていたんだけど、まさにその通り。曲が終わって少しだけMC的に話す時には完全な関西弁。このギャップがまた素晴らしいポイント。約1時間ほぼノンストップな歌声を聴きながらお酒が飲めるという至福のひとときを過ごせた。


 


ライブが終わった後に少しだけ話すことができた。ちょうどamazonウィッシュリストに彼女のCDを入れていたので、その場で買わせていただきました。お釣りを出す姿がとっても印象的だった。ほんとに普通に下北にいるお姉さんみたいな感じで。ああ、せっかくだからサインをもらえば良かったなあ。


またライブで彼女の「声」が聴きたい...。