『就活』記事を読みながら


最近、新聞の特集でも『就活』が大きなページ数を割いている。特集といっても単発ではなく、ほぼ連載のように企業の人事担当者や新聞社の役職者のインタビューやコメントが書かれている。想像以上に大変なのだろうと思う。僕が大学を卒業して就職した時期はそれこそバブルの絶頂期で、今とは正反対の状況だった。ほとんどの学生は内定の数を競い合うような感じで、今、就活中の学生が聞いたら夢のように感じるかも知れない。


 


新聞に掲載されている人事担当者のコメントを見ると学生には難しい質問をしているな、という印象を受ける。特に大学で真面目に勉強して、生活のほとんどの時間を学校関係者と過ごした人には大変だと思う。部活でキャプテンを務めようが、長期間同じアルバイトを継続したとしても基本的には閉鎖的な社会での経験しかなく、かつ過去に培った知識や経験で答えを見つける習慣になれた身体に、『未来を想像して文章を書け』というのは初心者に上級者向けの問題を出しているようなものだと思う。


 


随分と前の話だけど、高校の後輩が就活している時に相談に乗って欲しい、と言われたことがあり、メールでの宿題形式でやり取りしたことがある。その時の最初の問題は次の3つ。



  1. アルバイトと仕事の違い

  2. なぜ就職しなければならないか

  3. 10年後の自分をイメージして、どうなっていたいか


 


それぞれ600字〜800字程度にまとめて書いてください。着飾ることなく、正直な気持ちで書くこと。期限は今週中で、メールで回答を送ること。


これは複数の後輩に試したことがあるんだけど、1.2.は出来ても3.の回答はほぼ破綻した答えしか返ってこない。考えてみて欲しい、通常の学校教育の中では未来をイメージしてブレイクダウンするようなシチュエーションはほとんどないはずである(将来何になりたいですか、は別にして)。


 


次の宿題はこれ。



『CHANCE−成功者がくれた運命の鍵−』 著者:犬飼ターボ




"チャンス―成功者がくれた運命の鍵" (犬飼 ターボ)


この本を読んで、感想をメールしてください。


期限は今月一杯(月初めに出題)。


実はこれも実社会では多いタイプのタスクで、『明日まで』とか『今週中』なんてタスクは計画しなくてもこなせるけど、1ヶ月後に完了させるタスクは『計画』が必要で、それに慣れていないとやっつけ仕事になり、読めばそんなことは直ぐにバレてしまう。


 


ここまでクリアした後輩は一緒にご飯を食べながら更なる問題が待っています。


例えば、ロシア料理を食べながら、なぜウォッカが発達し、こういう料理が形成されたのか意見を聞かせて、と。『分かりません』は回答にならないので、食べながらでも必死に考えさせます。もしかしたら本人は料理の味も分からないぐらい大変だったかもしれない。


 


企業側に新人を育てる余力がなくなり即戦力を求めるのは理解できなくはないが、大学側がそれに対応するだけではなく学生自身が意識を変えないといつまで経ってもこのギャップは埋まらないだろう。一方で、大学という場所が職業訓練所化していいのかという問題もある。僕は大学の授業にはあまり出席しない学生だったけど、授業の一部は仕事をし始めてから意味を持ち始めたことがいくつかある。それも社会人になって随分と経ってからである。そう考えると無駄のように見えるものも長い目で見ると無駄でないこともある。あまり目先にとらわれすぎるとその先でお互いに痛い目を見るかも知れない。ただし、目的のない時間の消費はいつの時代も何も生み出さないと思うけど。