音楽に触れる機会の減少がもたらすもの


先日、最初の会社の先輩と議論していた音楽に関するネタを書いておこう。


その時にはいろいろな話題で話をしていたんだけど、特に音楽に関して言えば『接触機会』が少ないこと、がテーマになっていた。かつてTVでもラジオでも音楽番組なかなりの数が放送されており、新しい曲の入手あるいは接触ポイントとしてこれらの音楽番組があった。現在はTVでもその数はめっきりと減り、ラジオに関しては番組は存在するもののラジオそのものに接触する人が減少しているだろう。


僕の若かりし時には自宅のオーディオにはチューナーがあり、クルマの中でも比較的FM放送を聴いていた。現在では自宅にはチューナーはなく、クルマの中でもFMを聴く機会はほとんどない。考えてみると自分が所有する音楽だけではなく、他のメディアから音楽を供給する大きな理由は、自分が所有する音楽ソースの量と切り替えの煩雑さが挙げられる。元々、僕は比較的CDを持っている方だと思うが(30歳前で1,000枚ぐらいあったと思う)、それでもCDを入れ替えする作業は意外と面倒だし、CDアルバムのすべての曲が好きなわけではない。クルマの中も同様で、CDチェンジャーを利用しても6枚程度、飛ばしながら聴けばすぐにネタ切れになってしまう。これを覆したのはiPod&iTunesである。僕のiTunesには8,000曲以上の曲がストックされていて、好きな曲を好きな順番で自由に組み替えられ、ネタ切れになる心配もない。これが家の中でもクルマの中でも気分やシチュエーションで自由に選択できるのであれば、自分が持つ音楽ソースだけでも十分である。


また音源のクオリティのアップやAmazonをはじめとするロングテール商品を簡単に入手できるチャネルが出来たお陰で、必ずしも最新の音楽である必要性が無くなってきている。だから僕は今でもダウンロードで音楽を入手することはしない派だけど、購入するとしても必ず最新の曲とは限らない。10年前、20年前の曲であっても気に入ったものは今でも購入するし、購入する際の意識としては何年前の作品かは気にしない。逆に現在では声量に陰りがあるボーカルの曲も10年前であればそういう課題もなく、満足した形で現在聴くことができる。


 


これは提供側から見ると非常にやっかいなことになっている。従来型の在庫ストック&店舗提供型の場合、スペースに応じてストックできる数は限られる一方、かつての競争は同時代のいろいろなアーティストだったものが利用者側は時代を超えたニーズに変化している。つまり、購入ニーズがあったとしても必ずしも最新の曲ではなく、ニーズに応えられるような曲を在庫することは非常に難しく、結果的に購買に繋がらない。


更に音楽を聴く環境が部屋のオーディオを利用する『聴く』という行為から、ポータブルオーディオデバイスを利用しての『ながら聴き』が中心になり、音源の入手チャネルもダウンロードが強力になってきている。ダウンロードの場合、必要な曲だけをチョイスでき、時代やアーティストに縛らないマッシュアップされた形で選ぶことはもはや在庫ストック&店舗提供型では提供不可能なサービスになっている。結果、大手の音楽メディア販売店の閉店や規模の縮小という現実に追いやられている。


次は違う角度で見ていきたい。