『THE WALL STREET JOURNAL』にみる電子新聞のあり方


『THE WALL STREET JOURNAL』は本当に良くできている。新聞は新聞なんだけど、iPhoneiPad向けに配信されている電子新聞のこと。もちろん、通常のWebサイトもあるけど、真骨頂はPC以外のデバイス向けの作り。まずデバイス毎にレイアウトが最適化されていることは当たり前で、iPhoneであれば利用シーンを考えて利用できるコンテンツが絞られている。今回はiPhoneではiPad向けのフォーカスして話をしたい。


iPad向けの『THE WALL STREET JOURNAL』はApp Storeからアプリをダウンロードし、そのアプリ内ブラウザを利用して閲覧する方式になる。そのため、レイアウトは完全にiPad向けになる。アプリを起動すると最新版のコンテンツをダウンロードするプロセスが走り、その後にコンテンツが表示される。結構な量をダウンロードするのか、Wi-fi環境でも意外と時間が掛かる。が、起動後は本当にサクサクと動く。読みたい記事のジャンルを選ぶとジャンル毎のヘッドラインが表示され、タップするとその記事が表示される。面白いのがヘッドラインの下に小さな広告が表示され、クリックすると拡張してバナー広告のようになる。この発想はきっとテキストベースのAdsenseだろう。今ではさりげなく出した方が気になってクリックしてしまう、そんなところを突いてきている感じがする。

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もう一つユニークな広告が記事と記事の間に表示される全画面広告。同ジャンルの記事を次々に見る場合には指でフリックすると次の記事が表示されるけど、その間に挟み込まれるように広告が表示される。見たくなければそのままフリックするのと次の記事になる。この場合、必ず広告を通過しないといけないけど決して邪魔な感じはしない。

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紙の新聞と比較して考えてみると、紙面を開いた時に一瞬で広告と分かると余程のことがない限りその面は見ないだろう。またWebサイトのバナー広告も品があるとは言えないものが多い。そんな中、この『THE WALL STREET JOURNAL』に使われている広告は広告も含めてデザインされている感じがする。実はここが重要なところで、提供側からすると『記事』と『広告』は全く価値が違うコンテンツなんだけど、読み手から見ると必要な情報は『記事』だろうが、『広告』だろうが価値があり、逆の場合にはどちらの価値を感じない。そして広告も含めてデザインされたコンテンツには高い価値、言い換えれば『品』のようなものを与えることができる。読み手の利用状況を想定して提供されるコンテンツ、今後のメディアの価値はここを考えないと意味がない、そんな気にさせる『THE WALL STREET JOURNAL』。