『売れる』ということ


近所の紳士服量販店にてスーツを買った。20代であれば絶対にあり得なかった行動である。今とは時代も違うし、僕が持っている価値基準も違っていたのでスーツはほぼデパートでブランドものを購入していた。当時の意識で言えば『量販店のツールは安かろう、悪かろうで、どうして売れるのか不思議だ』ぐらいの気持ちでいた。実際にはバブル→バブル崩壊→ネットバブル→崩壊と景気のアップダウンを繰り返してきた中、デパートはその役目を終えるフェーズになり、量販店は何とか保っている、という形勢逆転の状態になっている。では、なぜ量販店は生き残れているのか。

 

実は今の量販店は新聞に入ってくるチラシのような廉価品から高級品まで幅広く取り揃えていて、昔で言えば『ブランド』の商品も並んでいる。僕は学生時代に洋服の販売のアルバイトをしていたこともあり、どうしても『何でもいい』にはなれず、コストパフォーマンスは考慮しながらも一定レベル以上の質は求めてしまう。一方で、仕事で使うスーツは高級過ぎると持ちが悪くて、あまりよろしくない。

 

店に入ってからいろいろ物色していたが、こちらから声を掛けないと店員さんからの営業トークはない。が、実際にはどのクラスの商品に興味を持っているのかは十分チェックしていた。つまり、僕の場合には廉価品を出してはいけないことを見極めていた、ということ。この距離感はいいよね。

 

次に、僕の希望の色のサイズが無かったんだけど、他店に在庫があることをバーコードのチェックで確認してくれた。これは店員さんのスキルだけではなく、会社のインフラとして必要なファンクションを準備している、ということである。まあ、僕もアルバイト時代に他の支店やメーカの在庫を電話で確認したりしていたけど、お客を待たせずに購買チャンスを逃さない仕組みになっていることが素晴らしい。

 

重要な品質は本当に良くできている。スーツの場合、デザイン、生地、縫製の3つがバランスよく高いレベルのものが最終的には良い商品になる。デザイナーの名前が中心の商品はデザインはいいものの、縫製がイマイチだったりすることがある。また良い生地は良い縫製でないと意味がない。この辺は本当にビックリするぐらいの品質。

 

今の量販店は『集客』、『価格のカバー範囲の広さ』、『購入したいと思わせる仕掛け』のすべてを満たしている。アパレルに限らず、見習うべき点は多々あると思う。