大衆スイーツというマーケット

久しぶりに会った井上さんとの話題で『モンテール』の話が出たのでちょっと考えてみた。
モンテール』は主にコンビニに並ぶスイーツを作っている会社で社名は知らなくても商品を口にしたことがある人は多いと思う。僕自身も会社名だけではあまりピンと来なかったが、井上さんにちょっと説明してもらったら結構購入している商品であることが分かった。それほどTVや雑誌などで紹介されるような部類に入るスイーツではなく、「ちょっと甘いものが・・・」の時に手にする、強いて言えば『大衆スイーツ』になる。有名店やデパ地下の高級品、お使いものではなく、自分自身で購入して口にするものである。
これまでは「不二家」、「コージーコーナー」、「ヒロタ」あたりがカバーしてきたマーケットをコンビニというチャネルに乗ってマーケットを変えてきた感がある。不二家は賞味期限切れの材料を使っていた不祥事があり、山崎パンの支援を受けて現在は山崎パンの傘下になっている。コージーコーナーも現在はロッテの傘下であり、ヒロタも2001年には経営破綻している。共通しているのは直営、FCの違いはあれ、いずれも自社ブランドの専門店を展開して拡大してきたが、その成長に歯止めが掛かり、他社の支援が必要になった構図になっている。
一方、モンテールは直接販売よりも販売チャネルに流通させる部分に力を入れたところに特徴がある。特に92年にコンビニに参入してからはチルド製品を中心として伸びが凄い。これはコンビニに展開することで競合他社の専門店と比べて『時間の制約』から解放されたことが大きい。『時間の制約』というのは、専門店の場合、閉店時間は19時あるいは20時程度であるため、営業時間内に「購入意志」が無ければなかなか来店に繋がらない。一方、コンビニの場合には「思い立ったら・・・」というケースと「ついで買い」の両方を囲い込むことができる。また92年にはバブルの崩壊も本格化して、価値基準がブランドよりも価格にシフトし、「普段使い」の中で満足度が高いものが評価されるようになった外的要因もプラスに働いたことと考えられる。また専門店の場合には「洋菓子」ニーズが無ければ足を運ばないが、コンビニの棚を考えると購入者は必ずしも洋菓子を欲しているわけではない。
モンテールが成長した理由は、コンビニという強力な流通チャネルを利用したことだけではなく、「味」と「商品開発力」も無視できない。「味」の基準は菓子パン、大量流通品(大手のプリンなど)よりも上にすることで購入者には差別化が図れる。この答えが「チルド製品」なのであろう。「商品開発力」というのはコンビニをチャネルに置いた場合、商品の入れ替わりが激しいため、定番商品の他に新商品をどんどんリリースできる商品開発力が問われる。これを継続できる会社としての力が大きな推進力になっていると考えられる。
今後の課題は組織として動けるか、という部分になりそうである。なぜかこの業界はお家騒動で弱体化する傾向があるので。