つまずきの原因を見つける 「算数・数学が得意になる本」 芳沢光雄

算数・数学が得意になる本 (講談社現代新書)

算数・数学が得意になる本 (講談社現代新書)

やっぱり「これってどうなのかな・・・」と考えていると自然と必要なものに出会うものである。前回のミニワークショップで書いたこと、昨日もやっぱり同じ気持ちになったし、違うエントリで感じていたことも同時に腑に落ちた。
関連エントリ

本当に学ぶべきもの 2009-08-16 feel the wind
それって、相手に伝わってる? 2009-08-05 feel the wind

何かをする時に「検証」する、あるいは「推定」するプロセスが組み込まれていないことが問題であることが実感できた。算数・数学の中では「検算」という形になるけど、「検算」というプロセスが思考の中に組み込まれているかどうかが重要なポイントになる。
本書に出てくる例で言えば、

5.96 x 2.3

を計算する場合、6 x 3、つまり18に近い数字で、18を超えない値が解になる。これを意識できれば、小数点の位置を間違うことはないし、出た解が解として妥当な値かどうかを見極められる。これは算数や数学だけの話ではなく、通常の仕事の中でも意外と多くのシーンで出てくる。企画を立てた、あるプロジェクトのスケジュールを組んだ時に実現性の可否や破綻している部分がないか、と違う角度から見つめることが出来るかは当たり前のプロセスのはずではあるが、あまり当たり前になっていないことが多い。
本書で出てくる「平均速度」の例も面白い。

片道が60kmの道路を、行きは2時間かけて、帰りは1時間かけて戻ってくる自動車があります。自動車の行き、帰り、および往復の平均速度を求めましょう。

ここでは速度、平均の定義を理解していること、文章から要求されていることを汲む能力が必要になる。恐らく上記の問題でも、間違う大人も多いだろう。本書に書かれている部分では無いが、本当は「速度」ではなく「速さ」と表現した方がベターだと思っている。つまり「速さ」と「速度」は違うので・・・。これは高校1年の時に数学の先生から授業中に問われた記憶がある。通常、「速度」という場合には方向の概念が入ってくるはずである。
さて、本書でも触れている部分であるが、上記の行きの平均速度は30kmで、帰りは60kmになる。平均をそれぞれの値を合計し、その数で割る、と理解していると、平均45kmとなり、間違った解を出すことになる。本当は(60kmx2)/(2時間+1時間)のため、40kmになる。
算数や数学で学ぶことは解き方や公式ではなく、考え方やそのプロセスの思考を学ぶものである。言葉の定義、言葉の共通化、仮説/推定と検証など実ビジネスでも重要なパーツがたくさんある。もう一度、自分自身の頭の中を棚卸ししてみる良いきっかけになった。