分けて考えましょうよ、おサイフケータイ

「おサイフケータイ」が世界に広がらなかった理由 Tech Mom from Silicon Valley

この議論は分けて考えるべき内容だと感じました。

  1. Felica技術を利用した非接触型カードの可能性
  2. ケータイに於ける「おサイフケータイ」の仕組みとポテンシャル

1.に関してはJR東日本が「Suica」を「Edy」に関しては当初、ソニーファイナンスが先導して普及させてきました(現在の運営会社はビットワレット)。JRは磁気型の切符の次世代を検討する中で、Felicaに目を付けた訳ですが、元々ソニーICタグの研究の一環でFelicaの技術を構築したと記憶しています。その時にはあまりにもICタグとしては大きすぎたためにお蔵入りになり、JR側から話があって再度共同研究的に進められた経緯があった。当初の形はカード側に電池を仕掛けた方式だったために、今のカードよりもかなり厚みがあったものを電池を外して読み取り機に近づけることで電気を起こし、I/O出来るよう方式が変更になり、Suicaとして世に登場した。これによって、改札の無人化(完全ではないけれど)の推進、切符のコスト(製造、リサイクルを含めて)、改札機のメンテナンスコスト(よく保守員の人がメンテナンスしていますよね)などを考えると大きなメリットが出ていると考えられます。またグループで運営しているキヨスクやファーストフード店で利用出来るようにマーケティングすることで交通機関用カードからマイクロペイメント向けにマーケットを拡大することが出来たことで価値を増大させることに成功した。これだけであれば、ケータイに仕掛ける必要はなく、カード型で十分だったはず。しかし、世の中的にはケータイに実装することでユーザの利便性は上がり、より多く利用する(=つまりJRの収入が増える)ことが期待出来たためにJR東日本は大きな投資をしてモバイルSuicaを開発したと考えています。
2.に関しては、docomoが通信市場だけではなく金融市場への参入という思惑とケータイそのものが電話機から個人の情報端末に移行していった流れの中で生まれた仕組み、サービスだと思う。実際にdocomoは「ID」というサービスを提供しているし、おサイフケータイというプラットフォームにはJALANAチケットレスサービス、マクドナルドのクーポンなどマイクロペイメントではないサービスにも利用されている。おサイフケータイというプラットフォームは2000年代に入って一般的になったオープンソースの流れ同様に、直接的にビジネスにならなくてもプラットフォームとしてオープンに利用されることは長い目で見ると意義があることだと感じている。ケータイという枠で考えるとグローバル規模でビジネスが展開出来るかどうかは重要かも知れないけど、たとえ国内マーケットであっても他の分野で利用可能であれば、それはそれで意味があると思う。個人的にはなぜTSUTAYAでDVDやCDを借りる時にカードを出さないといけないのか非常に不満に思う。おサイフケータイのアプリの方がどれだけスマートなことか・・・。実際にファミリーマートEdyで支払う時に(もちろんケータイの)、「Tカードはお持ちじゃありませんか?」と聞かれても、持っていても僕は出さない(実際に出さないし)。だって、財布や小銭入れを出さずに決済したいからEdyにしている訳で、ちょっと考えれば分かることなんだけど。話がそれてしまった。
モバイルSuicaにしてもEdyにしてもサービス設計時点でクレジットカードを前提にしているように考えられる。実際にモバイルSuicaも当初はクレジットカード前提だったし、Edyは当初ソニーファイナンスが先導したことでもそう考えていいと思う。一方、おサイフケータイを利用していない人たちに「なぜ利用しないのか」と聞くと、ケータイを落とす(あるいは無くす)リスクがあるために躊躇しているという回答が多い。この二つを上手にクリアしていけば、グローバル対応していなくても市場はまだまだあると思う。例えば、家の玄関の鍵をおサイフケータイで処理するとか、会社の入退室にも利用するとか・・・・ね。