心に美しさを求めたいならば・・・ 『今日もていねいに。』 松浦弥太郎


"今日もていねいに。" (松浦 弥太郎)

この本に出会えたことがここ最近で一番の収穫。先日のBOOK MARKETで見つけた一冊。実は中身も見ずに著者と表紙(本の顔だからね)で購入を決意。音楽でいうところのジャケ買いモード。そう考えると装幀は重要だな、と改めて思う今日この頃。

実は松浦弥太郎さんの本はちょっと前に@mersyさんのエントリーを見て『松浦弥太郎の仕事術』を買ったので既知の書き手の方ではあった。が、実は『松浦弥太郎の仕事術』は未だに僕の本棚で読まれるタイミングを待ち続けている。そういう意味ではこの本が松浦弥太郎初めての本になる。


"松浦弥太郎の仕事術" (松浦 弥太郎)

 

本書は大きく4つのテーマに分かれていて、それぞれの10数個のエッセーが鏤められている。そう、収められているって感じじゃなく、まさに鏤められているって感じがピッタリ。ひとつひとつがほんわかしていて、平易な文章なのに心の奥深くに浸透していって自分の答えと絡みあう。まるで目の前に松浦弥太郎さんがいて、静かに会話しているような錯覚になる。昨年、「断捨離」という言葉が流行ったけど、現象そのものを見ると近いんだけど実際には『禅』の方だろうな、って思う。結果として切り捨てていくことはあるけど、それよりもひとつひとつを大事にして『自分と向き合う』という姿勢が伝わってくる。少し気になった部分をピックアップして感じたことを言葉にしてみたい。

 

おいしさをしってもらう、共有する、そんな人とのかかわりで生まれる楽しさは、格別な味なのです。

お裾分けしたもらったものをみんなに分けたら本人(松浦さん)の分が無くなってしまった時の話。お裾分けじゃないけど、この気持ちはよく分かる。好きなお店に友人を連れていって『美味しい!』ってひと言が聞けた時。そのひと言と笑顔をみたいから一緒にご飯を食べたいのかな。

「アドバイスはしないし、意見も言えません。作品を見て、あなたという人がいると知ることしかできませんよ」

なんと冷たい対応だろうと思うかも知れませんが、これは僕なりの誠実さです。

『凛とした誠実』というお話の一部。何かしらの答えを出すには「覚悟」と「情熱」が必要という。答えてあげることが誠実なのではなく、相手のことを信頼し、理解した上でなければ答えない姿勢。主人公は自分ではなく、相手であることに敬意を払っているんだよね。

 

『静かなしぐさ』というお話にはハッとさせらた。普段のちょっとした仕草が美しくもなるし、醜くもなる。お話の中では自動改札にICカードをどんな風にタッチするかを書いているんだけど、自動改札に限らず、電車に乗り込む時やお店のレジに並んでいる時でも一緒。ファーストフードを食べる時、ゴミの後片付けもそうだよね。自分が席を立って次の人が座る時、気持ちよく座れる状態になっているか否か。ゴミをちゃんと分けて捨て、トレーもきちんと重ねる。目の前の人がそんな仕草だったら気持ちよく自分も片付けられるし、そうでなければ不快な気持ちだけがそこに残る。誰かが見ているからではなく、誰かに褒めてもらいたいからでもない。

 

僕はこの本はベッドの脇に置いて、いつでも手にとって目を通すことができるようにすることを決めた。僕は立派な人間ではないし、ついついできていたこともまたできなくなることもある、時には感情にまかせて周りの人を不快することもある。時々、この本を読み返しながらそんな嫌な僕の星の数を減らせることができたらな・・・と思いながら。