現実を直視して、対策を施す 『手作り弁当を食べてる場合ですよ 格差社会を生き抜く処方箋』 日垣隆


"手作り弁当を食べてる場合ですよ 格差社会を生き抜く処方箋 (角川oneテーマ21)" (日垣 隆)


最近、僕の中のマイブーム『日垣本』(僕の中で勝手にそう読んでいる)の最新新書がこの本。日垣氏のアウトプットは『質』も『量』も本当に感心させられる。どの本も軸はぶれずにいろいろな角度からアプローチされ、そして目的の着地点に皮肉と一緒に舞い降りる。


今回は『格差社会』というある意味、流行言葉に鋭くメスを入れ、『じゃ、どうすれば・・・』まで含めて日垣節で展開されている。日垣氏の言葉に重さがあるのは、事実に基づいた裏付けを出し、そして事象を証明する言及方法に尽きる。つまり、感覚で書いているわけではなく、相当量のインプット(単に本を大量に読んでいるだけではなく、一次情報へのコンタクトを含めて)がそのまま結果としてのアウトプットに出ている(他の作品では、アウトプットを意識しないインプットは意味がない、とまで言っているぐらいなので)。


良い本(僕の解釈は、読んで価値がある本)は『まえがき』なり、『序章』なりを読んだ時に著者の伝えたいことが明確に書かれている。逆にいえば、ここがイマイチ腑に落ちなければ、その後を読む時間の方がもったいない。まえがきからいくつかの言葉を拾ってみると、



改善策は、二つあります。



理由は、簡単です。



格差がないことほど、恐ろしい支配現象はありません。格差は、あって当然です。


そして序章のタイトルは『もう他人のせいにするのはやめよう』です。完全に言い切っています。それだけの裏付けを揃えています。


 


序章以降、全五章で構成されているこの作品の中で一番のお勧めポイントは第四章の『格差社会を生き抜くサバイバル子育て術』。実際に3人のお子さんをどう育ててきたか、それも具体的に書かれています。仕事と趣味の違いについて言及している部分は事実を直視し、明確な文章で綴られています。就職試験の問題にしたいぐらい。



ギャンブルに必勝法は、ない。しかし必敗法は、ある。だから、必敗を避ける方法と智恵は確かに存在する。それを学校では教えないので、親が責任をもって教えているだけだ。


結局のところ、バンクロール(その日の手持ち資金)に奥行きがある者が、勝つ。金持ちが勝つと言っているのではない。あくまで、「それ」を失っても「次」も「その次」「そのまた次」も手持ちがある、という者が負けない。


FXで為替相場の売買をしているとこのことが身体で実感できる。負けないやり方が存在する。ギャンブルは勝つことよりも、如何に負けないようにするかが勝ちを引き込む。読みながら大きく頷いた部分である。


子供たちにブログの対価として学費と生活費を払う、という部分も大いに納得されられる部分だった。過去よりも今、そして未来の方がより文章力を求められるようになることは自明で、そのトレーニングと(仕事としての)経済の仕組みを同時に意識できるこのやり方は素晴らしいアイデアだと思う。


 


文章にクセがあるけど、多くの人にお勧めしたい一冊。


 


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