たくさんのビジネス書は必要なし 『小さなチーム、大きな仕事』 ジェイソン・フリード&デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン


"小さなチーム、大きな仕事―37シグナルズ成功の法則 (ハヤカワ新書juice)" (ジェイソン フリード, デイヴィッド・ハイネマイヤー ハンソン)

この本を読んだおかげで文章の書き方がいつもと違うかも知れない。もしそうならば、この本はそれだけ影響力があると言える。早川新書Juiceは創刊されてからいくつかの作品を読んでいるけど、いつも期待以上のものを手に入れることができる。一冊で済む内容を水増しして三冊にし、本の数で印税を稼ごうとする著者やタイトル数で運転資金を稼ぎだしている出版社とは一線を介している。最近はなかなか単行本も売れない時代だから、文庫や新書を少し高めにしている出版社が多い。ミステリー小説の場合、単行本を出し、新書サイズのノベルスを出し、最後に文庫本で締めくくるという一粒で三度おいしいリリースサイクルがある。僕もノベルスを買うことはあまりないけど、単行本と文庫の両方を買うことは結構ある。同じ読者に二度同じ本が売れればトータルの客単価は上がる、という算段である。まあ、僕の場合には『時間(タイミング)』と『解説』に価値を付けているので納得はしているけど・・・。

本書も正直いえば、180ページで\1100(税別)はちょっと高いな、と思った。が、今は\2000でも安いぐらいだと思っている。もしかしたら、今年読んだ最高の本かも知れない(まだ早いかも知れないが)。本書のテーマを拡大解釈すると『本の値段はページ数には関係なく、読者にそれだけの価値を提供できるかどうか、が値段に反映されるべき』と感じ、正しくこれを証明している。

今日のエントリーだけで説明し尽くすことは非常にもったいないので折に触れて何回かのエントリーをしていこうと思っている。まず原書は『37 Signals』の創業者でありCEOのジェイソン・フリードが書いている。当然、作家でもなければ評論家でもない。彼のビジネスの延長上にある活動の一つのアウトプットの形として本書を執筆している。ただし、本のためというわけではなく、普段からブログなどで発信しているメッセージをまとめ直した、といった方が近いだろう。文章はとても挑戦的で、反体制的に感じるかも知れないけど、多くのビジネスマンが感じている『違和感』をストレートに書いているだけでもある。本書はどこから読んでも意味があるし、多くの人はショックを受けるだろう。しかし、人が人として生きていく、あるいはこれからの仕事に対する姿勢を考えると共感を生む部分が多くあることに気付くはずである。

たとえば、最後の部分に『文化』という部分があり、こう書いている。

文化はつくるものではない。自然に発達するものである。だからこそ新しい会社には独自の文化がないのである。文化とはふだんの振舞いの副産物だ。(中略)文化とは行動であり、言葉ではない。

違う箇所には『文章力のある人を雇う』というところがある。

もし、選考の過程で誰を雇うか決めかねているときには、文章力の有無は一つの大きな選考基準になるだろう。マーケターでもセールスマンでも、デザイナーでも、プログラマーでも、どんな職種でも、文章力は大きな要素となる。


文章力がある人はそれ以上のものを持っている。文章がはっきりしているということは、考え方がはっきりとしているということである。文章家は、コミュニケーションのコツもわかっている。ものごとを他人に理解しやすいようにする。他の人の立場に立って考えられる。彼らは、何をしなくてもいいかもわかっている。そんな能力こそ必要なはずだ。

まだまだあるけど、今日はここまで。ね、最高でしょう。