結局、『かわせみ』をアンインストールして、『ATOK』に戻る


結局、『かわせみ』はアンインストールして、元の『ATOK』に戻った。理由はいくつかあるが、一番は「候補から選択」→「決定」時に1操作が必要なシーンがある。そして、Macの世界だけでしか辞書を利用できないことである。テキストをたくさん書く多くのユーザは「会社ではWindows」、「自宅ではMac」と使い分けていることが多いのではないだろうか。特にテキストをたくさん書くようなシチュエーションでは辞書がどれだけ整備されているかによって効率が全然違う。先日のブログでも書いた通り、僕は10年以上『ATOK』を使ってきているので、辞書は非常に馴染むような形になっている。実際、メールのように繰り返し利用するようなフレーズはそのほとんどを辞書に登録して、少ないフレーズで変換できるようにしている。一日に何通もメールを書かなければいけない、あるいは返信しなければいけないような人には必須の行為だろう。その恩恵を感じるのは他人のPCで入力する時に改めて辞書の重要性を感じる。

 

一方、フリーランスで自分の専用マシンで仕事をしている人を除けば、会社のマシンと自宅のマシンは共通ではなく、カスタマイズした辞書をどう簡単に共有するかがポイントになってくる。辞書をエクスポートして、共有サービスを利用し、インポートすることで技術的には実現可能ではあるものの、手間が掛かる行為は長続きしない。『ATOK』は『ATOK Sync』というサービスを随分と前から提供しているが、このぐらい簡単に共有行為ができないといつかは複数のマシンの辞書が個別辞書になってしまう。これは効率的にテキストを入力する際に足かせになってしまう。
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では、『ATOK』は圧倒的に強みを持っているかというと決してそうではない。現時点では『歴史』の勝利であり、今後も勝ち続けられるかどうかは別の話である。特に『かわせみ』の提供価格は脅威になる可能性がある。また増加しているMacユーザが『かわせみ』にシフトし、Mac版『ATOK』の出荷本数が減少してMac版『ATOK』の開発にブレーキが掛かり、Windows版にフォーカスするようになると僕が書いたような辞書の共有が破綻する可能性がある。それぐらい『かわせみ』の単体での完成度は高く、また価格的にも影響力を持っている。

 

現状、Macで『ことえり』を利用しているユーザには『かわせみ』は圧倒的な効率の向上をもたらすと思う。Windowsで言えば、MS-IMEATOKに切り替えた時に感じるようなものである。つまり『かわせみ』は『ATOK』の絶対的な立場を浸食するきっかけになる可能性がある。個人的には『ATOK』に頑張ってもらいたい気持ちが強いが・・・・。

 

最近の世の中で発生している現象でもあるが、過去に絶対的な地位を確保していたものでも、ちょっとしたことで牙城が崩される。そういった意味でも製品やサービスの品質の向上/維持だけではなく、如何に顧客の心をつなぎ止めていけるかは業界を問わず共通の課題なのかも知れない。