「In His Times」 増島みどり

In His Times 中田英寿という時代

In His Times 中田英寿という時代

村上龍の「悪魔のパス 天使のゴール」と一緒に読むと非常に面白い。本書は著者が中田英寿への定点観測をインタビューという形を通してまとめられている。僕らの中田に対する印象はどうしてもTVのコメントが中心で、ずっと誤解していた感がある。それは「悪魔のパス 天使のゴール」を読んだ時に感じたことだが、今回はそれ以上によく分かった。
韮崎高校から平塚に入団し、ペルージャペルージャかどうかは別にして)に移籍というシナリオも平塚入団からのシナリオだった。中田は自分自身のキャリアパスを最初から描いており、平塚のフロントは中田の才能に投資し、チーム運営よりもキャリア支援に重点を置いていることが素晴らしい。中田がこだわる「パス」のようだ。インタビュー以外にも前園や名波のコメント、そして彼らへの中田のコメントが興味深い。
本書を読んで一番感じたのは「パス」は「コミュニケーション」ということだ。サッカーということではなく、パスを出す側が相手に対する「思い」をどう伝えるか、という・・・・。誤解されずに自分の思いを伝えるために技を磨く。本書はスポーツノンフィクションというジャンルではなく、コミュニケーションデザインの本として見るとまた違った見え方をする。