「RUN!RUN!RUN!」 桂望実

RUN!RUN!RUN!

RUN!RUN!RUN!

「誰かのために」ではなく、「自分のために」と思っていた優ですら本当には自分のために走っていたわけでは無かった。長距離ランナーとして類い稀な才能に恵まれ、それまでの大会では優勝以外したことがなかった。「走ること」のためにはストイックに、傲慢さはアスリートとして必要な面だと思っていた。逆に「仲間のため」なんて発想や気持ちは「走り」にはマイナスなものだった。同級生 岩本の生き方を見ながら、そして出生の秘密に疑惑を抱きながら、優は初めて自分自身を見つめ始める。
単純なスポーツ小説でもなく、青春小説でもなく、そこには遺伝子操作やドーピング問題といった時事問題を加え、家族や家庭の脆弱さも含めた本当に良く出来た小説である。是非、その後の優を見たい。