「半島」 松浦寿輝

半島 (文春文庫)

半島 (文春文庫)

初めて読む作家。別に自分で買ったわけでなく、友人が読んだ本を大きな袋に詰めてくれていただいた中の一冊。普段読んでいるエンターテイメント系に比べるとちょっとだけ文学的なテイストだ。現実と幻の世界を行き来しているような感覚で進んでいく。
舞台は瀬戸内の小さな島だが、自分の記憶のイメージの中では長崎・野母崎の先の島に思えてしまった。きっと読んだ人それぞれに感じる島があり、それは必ずしも舞台になっているロケーションとは限らないのだろう。誰しもが抱える小さな「悪」を洗い流したいから非日常の世界に足を踏み入れるのだが、やがてそこも日常となり、新たな「悪」に触れてまた悩む。きっと年齢を重ねるということは悩みを重ねることと同義語なんだろう。