「タルト・タタンの夢」 近藤史恵

タルト・タタンの夢 (創元クライム・クラブ)

先日の「サクリファイス」に続いて近藤作品にチャレンジ。一瞬、北森鴻の香奈里屋シリーズを思い浮かべるような短編が連続する。著者紹介部分を見ると鮎川哲也賞を受賞していることもあり、まるで北森鴻と同じ路線なんですね。違うところは、あまり料理が美味しそうに見えないところ。これは文章力によるものなのかは分かりませんが、北森作品の方が料理部分でも引き込まれます。
この作品は後ろにいけばいくほどジワジワと引き込まれていきます。書くことにこなれてきたのか、テーマがしっかりしてきたからなのか、前半2作ぐらいはちょっと幼稚な印象を受けますが、最後の「割り切れないチョコレート」はかなり良い出来です。意外に気持ちが入った時とそうでない時の差が作品に出てしまうのかも知れない。