「凶笑面-蓮丈那智フィールドファイル1」 北森鴻

凶笑面―蓮丈那智フィールドファイル〈1〉 (新潮文庫)

凶笑面―蓮丈那智フィールドファイル〈1〉 (新潮文庫)

異端の民俗学者 蓮丈那智が活躍するシリーズの第一弾。犯人捜しやトリックを紐解く作りの作品とは一線を介し、民俗学研究の先で事件が起こってしまう(=人が死んでしまう)というところが中心にある。しかしながら、主人公たちのキャラクターを際だたせ、歴史、宗教などを織り交ぜながら物語が展開される。人によっては読みにくい分野かも知れないが、徐々にこの世界の虜になるだろう。
随分と昔の話になるが大学で社会学を専攻したので、民俗学や宗教社会学を学んだ(?)。そのお陰で抵抗感なく読み進められたものの、「もっと真面目に学んでいれば良かった」と後悔している。交通網の高速化やインターネットの普及により祭祀は形骸化する傾向にあるのではないだろうか。やはり宗教による影響に閉鎖性と時間の流れが加わり、独自の倫理観や価値観が生まれるのだろう。

三軒茶屋のビア・バー「香菜里屋」(香菜里屋とは書かれていないが)に蓮丈那智と宇佐見陶子が登場するシーンはファンには堪らない一場面である。