「扉は閉ざされたまま」 石持浅海

扉は閉ざされたまま (祥伝社文庫)

扉は閉ざされたまま (祥伝社文庫)

こういう手法の話を「倒叙ミステリ」っていうですね(解説を読んで知りました)。過去の石持作品の延長線上で読むと正直「あれ?!」という気持ちになる。でも読み終わってみると、不思議と満足感に満ちている。この作品のポイントはきっと「動機」なんだと思う。伏見の正義感から生まれる価値観が殺人計画に発展する。「伏見の冷静さ」対「優佳の冷静さ」を主軸に恋愛感情を絡めて謎解きが進んでいく。正直なところ、優佳のキャラクターはちょっと頑張りすぎの感がある。が、三部作の序章捉えれば許容の範囲か?

個人的に不満なのは新山が持ってくる余市のシングルカスクはストレートで飲むべき代物でしょう。ストーリーの中に「水を足す必要がある・・・」くだりは酒好きの集団に設定したところを考えると違う気がする。

第二弾は間もなく出版されるとのこと。「早く読みたい」と思わせるだけ、この作品は良い出来なんだと思う。