シリーズ最後はオールスター戦 『PRIDE-プライド 池袋ウエストゲートパーク』 石田衣良




"PRIDE(プライド) 池袋ウエストゲートパークX (文春文庫)" (石田 衣良)


 


IWGPシリーズもこの節目の10作目でひとまず終わる。比較的コンスタントに出版されていたので感覚的にはあっという間の出来事のような印象だ。でも、細かく見るとマコトのPHSはケータイに変わり、IWGPのタイトルを並べてみればその時代のキーワードみたいなものがうかがえる。


 


他の人のレビューを見るとこの10作目に対してはどちらかというとネガティブな感想が多いような気がする。「ストーリーが焼き直しと」か、「タカシがキングらしくない」とか...。でも僕はそうは思わない。なぜならIWGPシリーズの真骨頂はリズムだから。それにじっくりとよく見て欲しいんだけど、実は使っている単語には普段使わないような単語も多く含まれている。それにも関わらず、すんなりと読めてしまう。それはつまり独特のリズム感があるから。そして、流行りモノを素早く取り入れて時代の空気感を作る。それ以上を求めるものじゃないし、それがIWGPらしさだと思うんだけど。


 


この「PRIDE-プライド」も4つのエピソードが描かれていて、


ってタイトルが付けられている。


個人的には最初の「データボックスの蜘蛛」が好き。タイトルから想像がつくと思うけど、ケータイにまつわる事件。最初のIWGPが上梓されたのが1998年だから、まだケータイは電話の時代(iモードのサービスは翌年だからね)。それが10数年でパソコンの代わり+αになっている。ほぼ手のひらサイズの箱の中には情報だったら何でも入れられ、何でも引き出せるようになったし、それがすごく便利だからそれに依存した生活になってしまっている。だからこんな事件の可能性があるわけ。


タイトル作でもある「PRIDE-プライド」はオールスター戦。シリーズの最後を飾るためにそうしたのだと思うけど、テーマ的には好きになれない。作品云々ではなく、基本的にこのテーマが好きじゃないから。でも石田衣良独特の言い回しで、ちょっと気に入ったのはこのエピソードの中の言葉。


ほんとうの宝物って、ただの値札や流行で決まるわけじゃなく、そうやって増えていくもんだよな。なあ、あんたにはいくつ、そんな宝物がある?


自分の中の大事なものって間違いなくPricelessだし、意外となんでもないものだったりする。もしかしたら、モノでもないかも知れない。こういうフレーズに出会うだけでもIWGPを読む価値があると思うんだけどね、僕は。


 


*この作品は電子書籍で読みました。