「非正規レジスタンス 池袋ウエストゲートパークVIII」 石田衣良

非正規レジスタンス―池袋ウエストゲートパーク〈8〉

非正規レジスタンス―池袋ウエストゲートパーク〈8〉

今回の作品でIWGPの見方が変わった。石田衣良は世の中で起こっているいろいろな問題や課題を分かりやすい形でたくさんの人に伝えようとしている。「ドラゴン桜」の三田紀房が伝えるべきことを敢えて「マンガ」という手法で伝えているように、石田衣良の場合には分かりやすい文章というアプローチで同じようなことを実現している。
この作品の「池袋クリンナップス」は非常に興味深い。働くことのインセンティブが「金銭」ではなく、「社会性」や「社会への貢献の可視化」がインセンティブになっているのは現代の若い世代の象徴かも知れない。子供時代にどのような社会環境で育ったかで仕事に対するインセンティブが変わることは会社の若い世代を見ていても感じることである。一方、タイトルにもなっている「非正規レジスタンス」では派遣の問題を鋭く取り上げている。モチーフはグッドウィルフルキャストで問題視された部分。ホームレスになることへの強い抵抗、一線を越えないようとするプライドと現実の厳しさの中をサバイブする様子は小説の世界の話ではなく、現実的に起こっている「事実」。使う側から見れば「都合が良い労働力」に見えるかも知れないが、それぞれの個々人は人間であり、決して機械の部品じゃない。ワーク・ライフバランスと共に大きな問題である。