社会人2-3年目の人向け『統計学に頼らないデータ分析「超」入門』

本書は著者の柏木さんから献本いただきました。

 

柏木さんの本は過去に何冊も読んでいますが、本書は初の新書版であること、そして若手の社会人に向けて書かれていることが特徴ですね。新入社員の人よりかは社会人2-3年目の人が読むとピッタリかと思います。このサイエンス・アイ新書シリーズはマンガのような挿絵も多く、本書の内容に合わせたグラフや表、図版がこれまでの柏木さん作品と比べても非常に多いので「読む」というよりも各テーマ毎に納得してから先に進んだ方が本書には適した読み方だと思います。

仕事で必要な「データ分析」とは

まず本書の特徴を簡単にまとめてみましょう。

序章に詳しく書かれていますが、「そもそもデータ分析をするってどういうこと?」ということを定義しています。具体的にはデータ分析には以下のような目的のレベルがあると整理されています。

図版_データ分析超入門_分析のレベル

高度なデータ分析を仕事とするアナリストになりたい方は別として、多くの人が仕事という業務の中で求められるスキルは下から3つのレベルで、これができれば業界問わず部署を跨いで会話ができるようになります。これは業務というのは一人でするものではなく、多くの人と協力し合いながら進めていくもので、データ分析は方向性の正しさや合意形成を得るためのツールである、ということを考えれば自明だと思います。

 

全体把握と課題の可視化

本書の構成は2部構成になっていて、1部は業務で必要なデータ分析で、2部では活用事例としてケーススタディのような形式からデータ分析というツールをどう業務に利用していくかをイメージできるように書かれています。特に販売戦略やアンケート調査からのファインディングスを抽出するような活用事例なので、実際にこれらの業務に携わっている人には「なるほど」と思う部分があると思います。
本書の山場というかキモは第1部第3章の「2軸の視点でデータの関係性を分析」だと思います。仕事の中で見かける多くのグラフは時系列の売上だったり、2店舗の来客数の比較だったりで、客観的事実は把握できるものの、その後のアクションに繋げるには更に深い思考が必要になります。そこで2つの軸で表現することで全体を把握できると共に、課題がある支店や店舗をあぶり出すことが可能になります。実際に僕も仕事の中で分析を行う場合には

  • 全体を把握できるグラフ
  • 課題を明確にするグラフ

の2種類を用意します。このマクロ的な視点とミクロな視点の両方があるから納得して(≒安心して)進む方向性が決まります。ただし、この「軸」の設定、見極めは意外と難しく、経験という積み重ねが必要になります。そのため、身の周りのデータを利用して実際に手を動かすことをおすすめします。会社のデータでなくても、役所が発表しているデータでも、業界団体が発表しているデータでも何でも使えますよ。その時には本書を脇に置いて、躓いたら関係しそうな箇所を読み返してもう一度チャレンジする、という使い方が良いと思います。若手の方のステップアップの参考書として1000円の投資はかなりコストパフォーマンスが良いと思いますよ。