予想以上の出来でした!! 『直感に刺さるプレゼンテーション』 望月正吾


"直感に刺さるプレゼンテーション" (望月 正吾)

プチ誕生秘話

仕事柄、提案書や企画書など広義のプレゼン資料を書くことが多い。またせっかくプレゼン資料を作らない構成も見た目もカッコいいものに仕上げたい、という思いからこれまでプレゼンに関する本は相当量読んできた。しかし、「バイブル」と呼んでもいい本には一度も巡りあわなかった。セミナーのような大勢の前でプレゼンする際のテクニックだったり、PowerPointのTIPS集だったり、はたまたデザインにこだわり過ぎてビジネスの現場には不釣り合いな内容だったりと....。理由は単純で、本当に組織の中で企画の仕事を続けてきて、更にデザインもツールのテクニックも押さえていないと組織の中で使える提案書の本にはならない。

そんな風に思っていたので、タカラで長年企画の仕事をしてしてきて、プレゼンに特化したビジネスを始めたこの本の著者である望月さんに「望月さんがいつも話してくれるポイントってビジネスの現場ですごく大事なのに、その辺を押さえた本って無いんだよねえ。いっそのこと本にしてみない?」と気楽な気持ちで話したのがちょうど1年ぐらい前だった。

一方で、友人でもあり辣腕の編集者である技術評論社の傳さんに「(自分で書くわけでもないのに)今までにない、ビジネスの現場に通用するプレゼンの本って興味がない?」とヤクザまがいの話をしたらタイミングが良かったのか、望月さんと傳さんのお見合いの運びになり、1年弱の二人三脚の末、この本が生まれました。

振り切った中味

タイトルが『直感に刺さるプレゼンテーション』とキャッチーになっているだけでなく、各章の構成も非常にユニークな構成になっています。

  • 第1章 感情に訴えるための基本
  • 第2章 脳が喜ぶビジュアル表現7つの原則
  • 第3章 心を揺さぶるストーリーの組み立て方
  • 第4章 印象を自在に操るスライドの秘密
  • 第5章 人を動かす話し方のポイント
  • 第6章 イメージを形にするPowerPointの使い方
  • 付録

実は提案書も企画書も、「相手に何かを伝えるための道具」という見方をすれば、相手に対して物理的に伝えるだけではなく、気持ちを乗せて、そして相手の気持ちに変化を与えなければ相手は行動を起こしてくれません。だからこそ、「感情」、「脳」、「心」という単語を使っているのでしょう。まあ、好きな人に気持ちを伝えるのと一緒ですよね。

具体的な部分も説明しないとどんな感じの内容なのかわからないですね。第1章に「図解は論理的、イメージは感情的」という部分があります。そのページのサブコピーには「図解では感情は動かせない」と書かれています。おお、確かに図解というのは表であったり、グラフであったり、フローチャートのようなものだったりしますが、論理的に説明するものではあるけどちゃんと意識して使っていなかったなあ、と改めて気付かせてくれました。そして、その違いは図解で説明されています(笑)

本書のストロングポイント

とにかく読んでいて楽しい、というのがこの本の最大の魅力でしょう。かなり写真を多用した作りになっているけど、わかりやすいだけではなく、自分でプレゼン資料を作る時の参考例にそのまま使える(写真そのものではなく、切り口というか考え方として)。ちょっと面白そうだなと思った人はまずは店頭で手にとって中身を見て欲しい。これまでのプレゼンの本と全く違う印象を受けると思います。

どんな人に、どう利用してほしいか

この本は広い意味でテクニック集でしょう。ただし、"真似すればいい"というものではなくて、一度目は自分の中に"納得感"を芽生えさせるために読み物として読んだ方がいいでしょう。だから、若手の企画担当者でもベテランのマーケターでも、いやいや営業職でも管理部門の人でもきっと役立つはずです。役立つポイントは違うかも知れませんが。

そして、読み終わった後は自席のデスクの上にリファレンスとして置いて、ヒントが欲しい時、チェックをしたい時に読み返して使う。そんな使い方ができる本なので一家に一冊ではなく、一人一冊がちょうどいいですね!

最後にもう一つ。どう企画をまとめて、プレゼン資料したらいいのかイマイチわかっていない、という人はまず付録を使ってみてください。付録が何かは読んでからのお楽しみということで。

 

望月さん、傳さんの二人三脚の結果は僕の予想以上でした。さすがです。