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楽しみながら学べる 『なぜビジョナリーには未来が見えるのか? 成功者たちの思考法を脳科学で解き明かす』 エリック・カロニウス




"なぜビジョナリーには未来が見えるのか? 成功者たちの思考法を脳科学で解き明かす" (エリック・カロニウス)


 


普段から書店に行って、いわゆるビジネス書の棚の前にいる時間は非常に短い。仕事上で必要な本ならば、検索機で検索の上、僅か数分の内にその場所にたどり着き、中身をチェックして購入の有無を決断する。他にも理由がある。一部の書店を除き、ビジネス書の平台はテーマや作家から売れそうなものが本としてではなく、情報商材のように並べられ、手に取る気も失せるようなものが並べられている。それでも、時々は手に取り、中身をチェックする時もある。チェックする箇所は決まっている。参考文献のページだ。ここを見れば、自然とその中身のレベルが伺える。今回の一冊はその部分を軽くクリアし、更に以前に読んだダン・アリエリーの『予想どおりに不合理』の執筆に協力した人物の作品であれば失敗はないだろう、との予測をし、作品は期待通りだったと先に伝えておこう。


 


著者のエリック・カロニウスはかつてウォール・ストリート・ジャーナル紙やニューズウィーク誌で記者を務めていたため、世界の名だたる企業家たちと交流を持つことに恵まれた。一方で、先に書いた『予想どおりに不合理』を執筆した際に認知心理学に触れ、その後の作品の執筆時に脳科学について深く知ることでこの作品を書くことを思い立ったという。ページの多くはスティーブ・ジョブズとリチャード・ブランソンとのエピソードを中心に描き、彼らと過ごした時間を懐かしむようなセンチメンタリズムとその後に身につけた脳科学的なアプローチによる考察がセットで展開され、読み手は楽しみながらも新たな知識を得るができるような構成になっている。


彼は最初の段階でビジョナリーをこう定義している。



普通の人が見落とすものを見つけられる人である。


と。そして、ビジョナリーに備わっている能力として6つを挙げている。


  • 発見力

  • 想像力

  • 直観

  • 勇気と信念

  • 共有力


この項目を見た時にふとダニエル・ピンクの『ハイ・コンセプト』を思い出した。




"ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代" (ダニエル・ピンク)


ダニエル・ピンクはその作品の中で今後未来をリードするのは、


  • 何かを創造できる人

  • 他人と共感できる人

  • パターン認識に優れた人

  • 物事に意義を見いだせる人


と予測している。実は本書の発見力が書かれた章の中で興味深い一文を発見した。



いくら多くのパターンを覚えても、ビジョナリーのような洞察力は生まれない。大事なのはパターンの「質」だ。ビジョナリーが探し求めているいるのは、容易に見つけられない類いのパターンである。


そしてこのように結論付けている。



世界を変えるほどの偉業を成し遂げるのに、目の前に存在しないものを見る必要はない。他人が見落としているものを見落とさなければいいのだ。


ここまで読んであらすじを知ってしまった気分になってしまったかも知れない。だが、一番楽しめる部分は書いていないので安心して本書を手にとって欲しい。


僕の中の一番の収穫は、「直観」の章で展開されている「考える時間(そしてその後に購入)と満足度を調査」した実験結果だ。この先、仕事での企画を考える際に意識しなければいけない重要なポイントになった。行動経済学認知心理学に興味があり、ビジネスを自分でドライブしたいと考えている人にはうってつけの一冊だろう。参考文献だけでも一読に値すると思う。