映像と原作の両方を堪能してみる 『プラダを着た悪魔』 ローレン ワイズバーガー




"プラダを着た悪魔〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)" (ローレン ワイズバーガー)


 


映画は観ていたものの原作は読んでおらず、「男と女のスゴ本オフ」の時に@ogijunさんがすすめていたので読んでみた。@ogijunさん曰く、「かなり原作に忠実に映像化しているが、最後が違うんだよねえ」と言われちゃ、読まないわけにはいかない。原作を読んで、再度映像も確認するステップを踏みました。


 


原作の「プラダを着た悪魔」は主人公であるアンドレア・サックスの恋人のアレックスや友人のリリーとの関係が重要な役割を果たしている。アシスタントであるアンドレアが「ランウェイ」編集長であるミランダ・プリーストリーから理不尽な仕事を山のように言いつけられる部分は変わらないが、原作の方がより過酷な環境下で仕事をしている様子が分かる。ファッションをテーマにした映画はどうしても映像としての価値にフォーカスするため、「美しい」や「ファッショナブル」な画を流している時間が長くなるためどうしてもそうなってしまうだろう。


逆に本の場合には活字で表現するしか方法がないため、訴えたい部分は強調したり、重ねたりするため、どうしてもその部分が印象に残ってしまう。きっと両方を体感した人は原作のミランダの方が嫌な人物に写ったのではないか。


 


原作を読み、再度映像版をみると@ogijunさんが言われるように結末部分が違います。その一番の理由はアンドレアの雇用されている立場が違うからでしょう。アンドレア自身はファッションにも「ランウェイ」にも興味があるわけではなく、あくまでジャーナリストになるためのステップとしてミランダのアシスタントを受ける。ただし、ミランダと交わす約束(?)は原作と映画では違う。その違いは是非両方を堪能して答えを見つけてください。


 




"プラダを着た悪魔〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)" (ローレン ワイズバーガー)


もう一つこの本の楽しみ方を。


映画を見ている人に限りだけど、概ねストーリーに大きな違いはないので仕事に対する姿勢を自分と照らし合わせながら読み進めるとかなり楽しめるはず。当然ながら日本とは採用も雇用形態も違うけど、少なくともアンドレアは最初からプロとして仕事をしているし、その成長ぶりもうかがえる。少しの成長が相手から信頼を勝ち取り、その積み重ねが信用になっていくことを考えると今の仕事に対する考え方もまた違ってくるかも知れない。理不尽な環境で働くアンドレアに感情移入するだけじゃなく、アンドレアのプロ意識を客観視するとこの作品の価値もまた違ってみえますよ。