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明日からつかえるは伊達じゃない 『明日からつかえるシンプル統計学』 柏木 吉基




"明日からつかえるシンプル統計学 〜身近な事例でするする身につく最低限の知識とコツ (現場の統計学)" (柏木 吉基)


 


「統計」という響きは多くの人の顔を曇らせ、その一部の人からはかなり強い拒絶反応すら受けることがある。大学の時の統計学の授業でも多くの仲間が憂鬱な科目の一つに挙げていた(社会学を専攻していたので、避けて通れない科目だった。幸い僕は小学校の最初から算数/数学は得意中の得意だったので全く抵抗がなかったけど)。しかし、実社会の中では統計ほど無意識に使われている学問はないのではないか。ギャンブルはもちろん、マーケティングでも人事考課でも普通に使われている。「全体」対「個(あるいはグループ」という構図になった瞬間に統計を用いらなければ説明することはできない。「じゃ、統計を勉強したらギャンブルで勝てるようになるのか?」と聞かれそうだが、それ以前に「騙されなくなる」→「損をしなくなる」ことは直ぐにできるはずだ。


もしあなたが会社で報告書を書くことがある人であれば、迷わず本書を読んでデスクの片隅に置いておくことを強くおすすめする。なぜならここに書かれている内容を理解し、マスターすれば、ほぼ数字の裏付けが必要な報告には事足りるからだ。逆に言えば、ここに書かれている以上のことをマスターしても実際のビジネスの場では使うシーンがほとんどない。そこに時間を割くのであれば、もっと別のところに時間を費やした方が価値が高いだろう。そう、本書の最大の価値はそこまで無駄な部分を削りに削って排除したことである。その勇気にエールを送りたい。


 


少し具体的な部分に触れておこう。第2章には「"平均"に隠れた有望な市場とは?」というタイトルが付けられている。平均や中央値、最大/最小、標準偏差などが説明されているチャプターになるが、具体例を出し、またExcelの画面キャプチャも利用することでほとんどの人は抵抗なく読み進められるはずである。


このぐらいは序の口で、本書を読みながら「おお、素晴らしい!」と思ったのはExcelの散布図を使ってデータの可視化をしていることである。多くの人はその機能があることすら知らないかも知れないが、グラフと同じようにデータを2次元にプロットしてどんな散らばり方をしているのか見ることができる。平均値や標準偏差の値を見てもピンとこない人でも、この散布図を見ればなんとくな「まとまりが2つある」とかに気づくはず。そして、まとまりが2つあったら平均値は意味をなさない(理由を知りたい人は本書を読んでくださいね)。


これを理解できると何に役立つか・・・金融機関のセールストークでよく言われる日本人の平均貯蓄額のマジックの謎が解けるようになる。


 


それともう一つ。


統計とは直接関係ないけど、Excelのグラフの使い方は書いた部分はきっと多くの人をハッピーにすることだろう。どのようなデータにはどんなグラフを利用したらいいのか、間違ったグラフ表現とはどういうものかを丁寧に説明してくれている。どんなに統計の知識を身につけても、最後のアウトプットが方向がずれていたら全く意味がない。


 


最後にもうひと言だけ。


機能説明や専門的なことを書いた本はたくさんあるけど、実践的かつビジネス上の利用シーン(=ゴールイメージ)が前提にあって、無駄な部分を切り捨てている。みんなデスクの上に辞書のように置いて時々振り返った方がいいよ。