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オーディオブックはラジオドラマになるか 『池袋ウエストゲートパーク』で試してみた


オーディオブックIWGP


 


小学生の頃、AMラジオで聞いた「ラジオドラマ」が今でも印象に残ってる。当然ながら映像がないので、声優さんのセリフの言い回し、語り手の口調、そして効果音を聞きながら頭の中にそのシーンをイメージした。放送波の多チャンネル化やDVDやブルーレイなど映像メディアの普及、そしてYouTubeをはじめとしたネット経由での映像と受け身型メディアが溢れかえっているためか、却って昔聞いたラジオドラマのようなものに触れてみたくなった。


 


ちょうどそんな時にオーディオブックを提供している「FeBe」からポイント失効のメールが届いた。その時にちょっと閃いたのは「セリフが多い小説なら意外とラジオドラマのようになるんじゃないか」と。そんな思惑から石田衣良さんの「池袋ウエストゲートパーク」をポチッと。


先に結果をお話しましょう。予想以上に楽しめます!単純な朗読と違って、語り部分とセリフ部分は完全に違うモードで読み上げてくれるだけじゃなく、男女の会話部分には女性の声で読んでくれる(この作品の全体は男性の声。主人公のマコトが男性だから当然だけど)。さらに所々に効果音も入っている(でも、ラジオドラマではないのですべてのシチュエーションに効果音があるわけじゃない)。


 


それから音声だから気づくことがあることも分かった。この「池袋ウエストゲートパーク」は池袋西口公園をさしているわけだけど、この最初の作品の中では「ウエストゲートパーク」とはあまり使われず、「西口公園」という表現が多い。最初に「ウエストゲートパーク」という表現がされるのは最初のエピソード(「池袋ウエストゲートパーク」)の最終シーンで、その後も会話の中でも普通に「西口公園」と使われている。


手元にある文庫本の「池袋ウエストゲートパーク」は何度も読んでいるけど、そんなことは全然意識しなかった。やっぱり、視覚から入る情報を変換するのと聴覚から入る情報を変換するのではイメージを作る部分で全然違うんだ、と改めて思った次第。


 


それから石田衣良さんの文章のキモはそのリズム感なんだけど、読み手の人はかなり上手にそのあたりをクリアしている。だから、聞いていて気持ちがいい。どこで聞くのがいいか、っていうと、小さい頃のラジオドラマと一緒で夜寝る前にヘッドフォンで聞くのが一番。電車の中や喫茶店とかでも試してみたけど、ある程度まとまった形で聞いた方がいいこと、音声以外の情報を遮断した方がいいことを考えるとベッドの上がベスト。ただし、のめり込むとそのまま一時間ぐらいは聞き入ってしまうので睡眠不足の要因になりかねない。


それともう一つ。時間が掛かる。文庫で350ページ強の「池袋ウエストゲートパーク」が9時間以上の長さ。まあ、楽しみが長続きすると思えばプラスなんだけど。


 


じゃ、試してみよう、と思った人にアドバイス。オーディオブックだけで得られる情報は限られているので、原作の本と一緒に(先に本を読んだ方がいい)味わうことをおすすめする。ちなみに僕は「池袋ウエストゲートパーク」で味をしめたので、この続きは聞き続けるよ。だって、原作のIWGPはコンプリートしているから。




"池袋ウエストゲートパーク (文春文庫)" (石田 衣良)