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毒性が強いのでお気を付けて! 『電子書籍を日本一売ってみたけれど、やっぱり紙の本が好き。』 日垣隆

Book




"電子書籍を日本一売ってみたけれど、やっぱり紙の本が好き。" (日垣 隆)


 


先にお知らせしておきますね。この本は毒性が強いので耐性がない人にはおすすめしません。どんな耐性が必要かというと、


  • 書かれている内容を自分で吟味して情報の取捨選択が自分でできること

  • 出版や電子書籍に関する情報に触れていて、自分なりの意見が確立できていること

  • 過去に日垣さんの本を読んで波長が合うな、と思った人


これらの条件を満たしていないと毒のままなのでamazonのレビューを書いている人たちのような気持ちになるでしょう。条件を満たしている人にはとての充実した作品に感じられると思いますよ。


 


タイトルはかなりキャッチーというか、吊り要素たっぷりだけど、書籍の範囲にとどまらずかなりの部分で僕が感じていたことに近い。まず、まえがきに書かれていた



紙から電子書籍へは、交代してゆくのではない。「考える読書」と「検索」は違うのだ。


という一文は「紙」か「電子」かの二元論ではなく、そもそもその特性の違いを明確に表現したひと言だし、僕もiPadSONY Readerでそれなりの数の本を読んでみたけど同じように思っていた。特に脳の特性を引用しながらの論理の展開はまさに僕自身が体験したことと合致している。そう、電子書籍で読んだ文章ってあまり記憶に残らない。それに、こうして読んだ後にその作品のまとめを書こうと思うと圧倒的に「紙の本」の方が優れている。どこからか「電子だったらブックマークができて、検索もひとっ飛びじゃん」という声が聞こえてきそうだけど、読み返す時って紙の本なら付箋を付けた箇所の前後数十ページを読み返すんだよね。前後、数ページ飛ばしなどは紙に印刷された文字だからこそできるショートカット。これは電子だと逆に不便な部分だ。


 


全体の話をしますね。本書は3部構成になっていて、


  • 前編「電子書籍」を思考整理する

  • 中編「滅びゆくモノたち」を思考整理する

  • 後編「生き残るコツ」を思考整理する


前編は書き下ろしで、中編/後編は週刊現代に連載されたものを再編集されています。自分で付箋を付けた箇所をみても、圧倒的に前編が面白い。中でも「結局は可処分時間の奪い合い」とサブタイトルがついた部分は書籍という枠で物事を考えるのではなく、ケータイやネットのサービスを含めて時間の奪い合いの中で戦っているという視点は僕が仕事の中でクライアントとよく話していることとリンクする。どんな人に対しても1日は24時間と変わりなく、必ず睡眠時間は8時間程度あり(個人差があるが)、メディアは、たった1〜2時間の細切れの時間を争奪している、と結論づけている。だから「出版は所詮ニッチ産業である」と豪語する。


 


他の日垣作品に比べてこの作品は著者の思いが強いのか、裏付けがないまま断定している箇所がかなりあります。だからamazonのレビューではネガティブなコメントが多いんだと思うけど。でも、そこは論文じゃないんだから自分で補完すればいい話で、嘘/ホント、誇張を理解しながら読めばいい。なんとなく、「それぐらい分からないヤツがそれこれと能書きをいうな」と日垣節が聞こえてきそうな感じ。


と、先に書いた条件を満たす人はかなり満足度が高いと思いますよ。