ビジネス以外でもたくさんヒントはあると思うよ 『ユダヤ人大富豪の教え -ふたたびアメリカへ篇』 本田健




"ユダヤ人大富豪の教え ―ふたたびアメリカへ篇" (本田 健)


 


この書籍は『本が好き!』から献本いただきました。


 


米国でお金に関する手ほどきをユダヤ人のゲラー氏からうけ、自分のビジネスを立ち上げ、順調に成長していたケン。実はそう見えていただけで、本当はあちこち綻びが出始めていた。スタッフとはなんとなくギクシャクし、そして奥さんは置き手紙を置いて家を出て行ってしまう。そんなイントロで今回の物語は始まる。著者である本田健氏が自身の体験をもとに小説仕立てで書かれたこのシリーズ、その文章を読むと主人公であるケンに対して「そうじゃないよ」とか「なるほど」といつの間にか感情移入しながら読んでいる自分がいる。書店では「自己啓発」というカテゴリーに括られるけど、小説として読んでも十分に楽しめる。


 


今回のテーマは感情のコントロール。でも自分の感情なんだけど、自分一人のことではなく相手との立ち位置、関係からくる感情という切り口が興味深いところ。そして、何でもポジティブに捉える、という自己啓発系にありがちなアプローチではなく、「もっとニュートラルに捉えるべき」というのが本田氏の考え方。それが如実に表れてるのが、



「感情に、いいも悪いもない。ポジティブな感情も、ネガティブな感情も、同じように使えるものだ。ほとんどの人は、感情を感じないようにしてしまっているので、感情のエネルギーを抑圧してしまっている。だから、精気のない、退屈な毎日を送る羽目になる。


たとえば、悲しみ、怒りなどは、すごくパワフルではないかな?人が怒り狂うとき、ものすごいパワーが出ると思わないかい?」


スター・ウォーズじゃないけど、ダークサイドのフォースも使い方次第ということですね。つまり怒りや悲しみの感情をそのままぶつけてもダメで、相手との感情的な距離感の中で使えば意味がある、ということ。


 


このストーリーはケンが参加する8日間のワークショップに合わせて進んでいく。2日目には本書の主題ともいうべき、『人間関係のチャート(4つのマトリックス)』が登場する。ポジティブとネガティブ、自立と依存の2つの軸で4つのタイプ分けをするんだけど、重要なのは人ぞれぞれすべてのすべての要素を持っているということ。これまでのタイプ分けではなく、相手との間に於ける中心からの距離感が重要な点を強調している。


実際に自分に置き換えて考えてみると分かりやすいだろう。Aさんと話す時には自然と自分自身が依存の位置にいるけど、Bさんと話す時には自立の位置にいるケースなどはよくある現象だと思う。これまでのタイプ分けやラベルに縛られる、あるいは思い込むのではなく、相手との立ち位置を意識することで、どうすればお互いの感情が通じ合えるかが後のワークで実践されていく。


 


本書の面白いところは仕事で悩んでいる人でもプライベートで悩んでいる人でも自分のことに置き換えて読むことでそれぞれ得るものがあるということ。なぜなら人は一人では生きていけないし、悩みのほとんどは人間関係だからここに書かれている『人間関係のチャート(4つのマトリックス)』はいいヒントになるだろう。


話はちょっとそれるけど、過去に本田健氏の講演を聞いたことがある。本当に話も面白いし話し方も上手だと思う。ただし、集まっている人の雰囲気は大嫌い。なんとなく宗教的なにおいがある。でも、本はどれも良い内容なので変な先入観なしに読んでもらえればきっとなにかしらその人にとってプラスになるヒントが得られると思う。昔の作品をもう一度読み返したい気分になったので、本棚から取って来よう、っと。