読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

頭の中にあった「編集」の定義が整理された 『編集進化論 -editするのは誰か?』 仲俣暁生+編集部

Book




"編集進化論 ─editするのは誰か? (Next Creator Book)" (フィルムアート社)


この本は千駄木往来堂書店に行った時に購入した一冊だけど、昨年の後半ぐらいから気になっていた『編集』というキーワードを見事に言い当てている内容だった。どんどん新しいメディアが誕生し、情報は無尽蔵に増えていく中でその情報をしっかりと整理して伝える必要性が増しているのは肌感覚で理解できていた。『キュレーション』なんて言葉もあるけど、あれってマッシュアップとほとんど変わらないことが多く、ちょっと意味というかニュアンスが違うんだよね。


 


本書は本の編集での経験をベースにこれまでの本や電子書籍にとどまらず、いい意味で拡散的発想を用いて『編集』を再定義している。それはWebの世界であったり、映像の分野であったり、はたまたプロジェクトというモノ以外のものにも適用している。中でも実際に編集者として経験を積んできた人たちがそれぞれの思いで寄稿して構成されている、と部分では考え方が画一化されておらず、いろいろな視点で『編集』を捉えているので非常に厚みのある内容に仕上がっていると思う。


では、いくつか気になったところをピックアップしてコメントしてみよう。



「編集とは翻訳」である、という考え方があります。編集とは、一つの世界を別の表現に翻訳し、そのコンテンツを別の世界の人にも分かってもらうことだというのです。その場合の編集者とは、広いフィールドに飛び出て、それまで出会うことのなかったaとbの間に「動線」を引き、新しい「交通」や「関係」を切り開く者を意味します。


短いながらも興味深い表現をしていると思う。中でも重要なポイントは「別の世界の人にも分かってもらうこと」という部分で、「技術的に新しいから」とか「かっこいいから」ではなく、元々のコンテンツや素材では伝わらない人に伝わるようにする、という『相手』と『目的』が明確にしていることだと思う。逆にいえば、これが無ければ『編集』の価値がないということもいえる。


対談の中で出てくる言い回しで、



僕は編集者の物づくりっていうのは、ズバリ、「思い入れ」と「思い込み」と、あとは最後「客観性」だと思うんですよ。


というところがある。このセリフには結構感動していて、実際にやろうと思うと大変なんだよね。思考としては「集中」と「拡散」の両方を行う必要があるので企画脳(そんなものがあるのはどうかは別にして)には必要なスキルだけど、実際にやるのは大変。やっぱり楽しようとして、過去の経験を元にしたパターンマッチングに陥るからね。


 


じゃ、どうしたらいいのか、という部分でもいくつかの提案がされている。その一つには「日常風景の整理と再編集」というテーマでヒントが書かれている。これはすごく納得感があって、同じ道を通るんでもクルマで走るのと歩いてみるのとでは全く違う風景になるし、感じるものも違う。全体を俯瞰してみるべきなのか、ディティールにこだわって見るべきなのか・・・。


 


かなりいろいろなエッセンスが凝縮されている本なので、水で薄めたような内容の本を何冊も読むより価値が高いと思うよ。