書店巡りのお供に 『東京ブックナビ』 東京地図出版編集部




"東京ブックナビ" (東京地図出版編集部)


旅行用ガイドブックを除けば、ある特定の目的のために編纂されたガイドブックはぴあマップが最初じゃないだろうか。映画やコンサートが好きな人にとって必要な情報は位置情報だけではなく、会場のサイズや座席レイアウト、そしてちょっとした特徴の記載があることがうれしかったりする。手元に原本がないので記憶が定かではないが、初版のぴあマップには西新宿(当時は新宿副都心なんて表現されていたと思うけど)の高層ビルの高さ比較もされていたと思う。つまりガイドブックの面白さを拡大させるためには本来の目的の他にどれだけ関連する『おまけ』があるかが重要だったりする。


 


本書をひとことで言えば東京エリアの書店、図書館を網羅したガイドブックということになるけど、少しばかり、いやかなり編集部サイドの思いで構成されていることを先にお伝えしておこう。つまり、該当エリアのすべての書店などが掲載されているわけではなく、完全にスルーしている店もあれば、ページをめくって最初のエリアが新宿、渋谷などの繁華街や神保町など昔ながらの本の街ではなく、「中野・高円寺・阿佐ヶ谷」というところを見てもはなから万人受けを狙っていないことが伺える(そもそも書店のガイドブックなんてものが万人受けするものではないが)。


 


各店舗の情報としては、店名、住所、電話番号、FAX番号、URL、営業時間、定休日、最寄り駅と特徴(ただしすべてではない)が書かれており、さらにどんな書店なのかを「新」、「古」、「専」のアイコンで表現している。それだけではなく、途中途中にそのエリアのおすすめ(?)喫茶店が載せられているのは面白い。自分自身の行動をふり返ってみると数冊の本を購入した後、まるで子供のようだけど近くの喫茶店などで軽く中身をチェックしたくなる、というかしている。実際には喫茶店というよりも、スタバであったり、ドトールであったりするんだけど。つまり編集部はこのガイドブックを手にするであろうクラスタ(そういう人たちのかたまり)の行動を読んでいる、ということになる。


 


本書の使い方は人それぞれだろうが、僕の場合には最近始めた「書店巡り」の参考書として利用している。よく行くエリアからチェックして気になる店をピックアップし、簡単なメモにしてiPhoneに入れておく。そうすることでちょっとした隙間時間に足を運んでみよう、という気になる。気になっているのは『谷根千』エリアの不忍ブックストリートだけど、『中野・高円寺・阿佐ヶ谷』は未開の地なので新たな発見があるかも知れない。こんな風に考える人には類書がない唯一の書店ガイドブックを手元に置いておくことをおすすめする。「ネットで十分」という声も聞こえてきそうだが、読んで楽しむだけではなく実際の行動に移したいのであれば確実に『本』の体裁の方が優れている。気になった瞬間にすぐに手にとって調べられる、いざとなったら本書をバッグに入れてお出かけする。さあ出かけませんか。