久々に苦労しました 『人形遣いと絞首台』 アラン・ブラッドリー




"人形遣いと絞首台 (創元推理文庫)" (アラン・ブラッドリー)


この本は『本が好き!』から献本いただきました。


 


いや〜、ここ数年間で一番苦労して読んだ本です。間違いなく献本でなければ挫折していたでしょう。メインストリームに到達するまで200ページ弱、その間も一つのシーンの話題があちこちに拡散するような書き方のため、頭の中に全体感がトレースできず、何も残らないまま読み続けていかなければならないのは苦行以外の何ものでもない。前作『パイは小さな秘密を運ぶ』で賞をとっているので期待していたんだけど、不発に終わりました。


 


大筋は11歳になるフレーヴィアが警察顔負けの名探偵になり、更に彼女は化学好きで中でも『毒』に好き、という変わり種。一緒に暮らす家族もそれまたちょっと変わっていて、お父さんは切手収集が趣味、二人の姉はいじわる、大きな住まいには庭師と家政婦が仕えている。そこにTVで有名な人形遣いが車の故障でフレーヴィアが住む町に訪れる、そして人形遣いが演目を行っている最中に事件が起きる、と古典的なフレームなんだけど、文章は大変読みにくい流れになっている。決して化学反応や化学式に拒否反応があるわけでもないのに、全然頭に入ってこない。まるでゴールが見えない中で前に進まなければいけない気持ちになる。


 


本当は1950年代の英国が舞台で、ちょっとおませで賢いフレーヴィアもやっぱり11歳なんだな、という部分もあって単純なミステリーとは違う部分も同時に伝えたかったことは分かるんだけど、もしそうであれば構成を変えてあげればすごく良い作品になるのに、というのが正直な感想。工夫次第では小学校高学年の子供たちも共感を得られる作品になる可能性があるのに、前半がそれを台無しにしている。ここは編集者が導いてあげた方が良かったのではないか。


楽しめる人もいると思うけど、かなり少数派なのではないかな。