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実験結果という『事実』を突きつけられると納得させられます 『不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」』 ダン・アリエリー




"不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」" (ダン アリエリー, Dan Ariely)


行動経済学という言葉がもてはやされて数年経つけど、本書のように読みながらところどころ笑ってしまう、そう、楽しんで読み進められる本は少ない。著者のダン・アリエリーは学者でもあるので数多くの実験結果をベースに答えを導き出している点は他の人たちと一緒なのだが、自身の経験と照らし合わせながら皮肉を交えて展開している点が大きく違う。堅苦しい文章ではないので、多くの人に理解でき、納得感が高い仕上がりになっていると思う。


 


第一部では職場での不合理な行動として『インセンティブ』と『モチベーション』に多くのページを割いている。この部分だけでも本書を読む価値がある。今でも多くの組織のインセンティブが報酬をベースに設計されており、それがうまく機能していないことを指摘している。僕の過去の経験でも報酬がインセンティブになってモチベーションがアップするケースは営業担当など一部では機能するものの、組織をまとめるマネージメントの比重が高まるほどあまり機能しない印象を持っている。特に生まれたときから物質的な面では恵まれて育ってきた今の若者たちを見ていると『報酬は多いに越したことはないけど、報酬がすべてではない』という印象は随分と前から感じている。そういう彼ら(彼女ら)と話すとなかなか言語化するのが難しいけど、自分や実行した仕事やタスクが良い/悪い共に正当に評価されることの方を重要視している。実際、ダン・アリエリーの実験でも一定以上の報酬がインセンティブになったタスクは著しくパフォーマンスを落としてしまうことを証明している。


報酬インセンティブの延長で『働くことの意味』という部分も興味深かった。相手のやる気をそぐ(モチベーションを下げる)方法は非常に簡単。プロジェクトの中、あるいは子育ての中でも身につまされる答えが書かれている。知っていてもなかなか行動に顕せないが、今後は相当意識して対応しなければ・・・と考えさせられた部分でもある。


 


『イケア効果』と名付けられた、利用者の『思い』を削いでしまう商品やサービスよりも利用者が手を加えられる『余地』を残すことが重要である、という部分はこれからサービス開発や事業開発をする上で参考になった。ネット上で人気を集めたTwitterEvernoteなどは完全自前主義ではなく、連携するインターフェースを解放し、それぞれの人が自由に組み合わせができるようにしている。利用者を増やすだけではなく、自然と利用者のロイヤリティが高まる結果になっている。これは時間やコストといった経済学の観点からも有効な手段だろう。


『信頼』と『報復』が表裏一体だという指摘も大いに納得できる。信頼していたものやサービスが些細なことで裏切られると逆に強いネガティブな感情を生む。気になる言動や行動がそうさせることもあるけど、全くアクションが無かったためにそういう感情に陥る時もある。購買意欲満々で店に行ったにもかかわらず、声を掛けられなかった場合などはそうだろう。僕もかつてクルマを買いにディーラーに行った時にそんな状態になったことがある(買うつもりで現金持って行ったのに、声すら掛けられなかった。Tシャツ、短パンにビーチサンダルだったからか・・・)。


 


まだまだこの世界は経済学的な正しそうな現実と実際はそうでない現実が存在する分野なので意識を鵜呑みにせず、仮説/検証を繰り返しながら『事実』を見つけて対応が必要な領域、と改めて感じた一冊だった。


この年末年始には本当にピッタリでした。