必要な本は必要な時にやってくる 『ザ・チョイス』 エリヤフ・ゴールドラット




"ザ・チョイス―複雑さに惑わされるな!" (エリヤフ・ゴールドラット)


『ザ・ゴール』に始まるゴールドラット氏の本はすべて読んでいる。この『ザ・チョイス』も第1版だから発売当初に購入して、約2年間寝かせていたことになる。このあいだ整理したら、50冊ぐらい「読みかけ」(全く手をつけていないのはほとんどなく)の本があってちょっとビックリした。この本も半ばぐらいまでは読んでいたんだけど、気持ちも新たに最初から読み直してみました。


 


『ザ・ゴール』からずっと継続しているTOC(制約理論)を新たな分野に応用した話になっている。そして、これまでのような物語調の流れではなく、ゴールドラット氏と娘のエフラット(心理学者)の会話とゴールドラット氏のレポートで構成されているのが特徴。これまでの物語調の作品に比べると若干取っつきにくく、哲学的なやり取りが多く出てくるのでゴールドラット氏のファンでないとちょっとだけ違和感を覚えるかも知れない。


実は結果的には2年間寝かせたことは僕にとって非常にプラスで、ちょうど『もっとも美しい数学』というゲーム理論の本と一緒に読んでいたことで本書の内容がスムーズに理解できた。もしそうでなければ、分かったような分からないような気持ちで読み終えたことだろう。




"もっとも美しい数学 ゲーム理論 (文春文庫)" (トム ジーグフリード)


 


本書が哲学的な要素が強く反映されている理由として、『充実した人生を送りたいと思っていた』ということに起因する。決して『楽な』人生ではなく、『充実した』人生である。そして物理学者であり、TOCを提唱するゴールドラット氏が『人と組織』にフォーカスしながらも、TOCの理論を応用しているのがキモである。


人は大きな課題や難しい課題に直面すると、難しく考えがちでであるがそうではない、と説く。『ものごとはシンプルである』という。しかし、現実にはそうではなく、3つの障害を抱える。



  1. 現実が複雑だと考えること

  2. 対立は当たり前で仕方がないことだと考えること

  3. 人には、他人を責める習性があること


特に3つめは新しいアイデアやアプローチを提案し、受け入れられない時やプロジェクトがうまくいかない時には必ずと言っていいほど顕著にあらわれる(僕自身を含めて)。ここを意識すると戦術が違ってくるよな、と思いながら読み進めていた。ここは先に書いたゲーム理論の本を読むと納得感が増す。


 


明晰な思考を手に入れるためにはどうしたらいいか、と娘は父に問う。そうするとこんな答えが返ってきた。



「エフラット、おまえは、どうやって明晰な思考の練習をしたらいいのか、私に訊いたが、答えを教えよう。一つだけ課題を決めるのではなく、身近な事柄すべてを対象にしたらいい。少しでもきになることがあったら、すぐにその原因と結果について考えてみるんだ。他人とちょっとした会話、夫の意見、いま読んでいる本でもいい。何でもいいんだ。おまえはいつも考えていると言っていたが、ただ考えるだけでなく、常に明晰に考えるように努めるんだ」


何となくは考えているけど、『原因』と『結果』という因果関係を意識しながらは考えていないな。


 


僕の中ではこれも結構刺さった言葉で、



私たち人間は、感情、直感、ロジックという三本柱の椅子の上に立っているようなものだんだ。


これはこの間読んだダニエル・ピンクの『ハイ・コンセプト』の話にも通じる。右脳、左脳の片側思考ではなく、両方が必要だと。ダニエル・ピンクは『共感』という言葉を使い、ゴールドラット氏は『調和』という言葉を使っている。


 


最後のまとめとして、



  1. 人は善良である。

  2. 対立はすべて取り除くことができる。

  3. どんなに複雑に見える状況も、実は極めてシンプルである。

  4. どんな状況でも著しく改善することができる。限界なんてない。

  5. どんな人でも充実した人生を達成することができる。

  6. 常にWin-Winのソリューションがある。


こうして意味ある本として読めたのも2年間寝かせたお陰で、いつも思うことだけどちゃんと自分に必要な本はそのタイミングに読むようにできている。


 


関連:


[Book]今だからこそ必要なもの 『ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代』 ダニエル・ピンク 2010-10-11