今だからこそ必要なもの 『ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代』 ダニエル・ピンク
"ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代" (ダニエル・ピンク)
物事には順番がある。本にも同じことで言える。そう『モチベーション3.0』を買ったものの、その前にこの本『ハイ・コンセプト』を読むべきだろう、と思い、『モチベーション3.0』を寝かせ、『ハイ・コンセプト』を読み始めた。
『ハイ・コンセプト』は話題になった本なので骨子の部分は大前研一氏のインタビューなどで知っていたが、改めて「本」として読んでみた。2006年発行だが、(僕にとっては)今の方が内容を理解しやすかった。
第一部 第一章の「なぜ、「右脳タイプ」が成功を約束されるか」は誤解されやすいタイトルだが、「右脳」か「左脳」か、という話ではなく、これまでのように「左脳」だけで成功者になれるわけではなく、『それにプラスして』「右脳」の能力が必要である、ということである。つまり、物事をロジカルに考え、組み立てられる力と全体を俯瞰して新しいアプローチを提案できる力が必要だ、と説く。『当たり前だろう』と言われそうだが、意外とそういう器用な人は少なく、多くの人はどちからが得意でどちからが苦手、というパターンになる。確か脳科学の観点からも得意な部分では脳内で活性化しやすく、苦手な部分は活性するまで時間が掛かる、ということが証明されているはずである。しかし、この本の良いところはそんな難しく考えずに読み進められ、かつ実際のアクションに移しやすいことが特徴である。
実際に僕が気になった部分を中心にコメントしていこう。
(「一億総中流社会」から真ん中が薄い「M型社会」に移っていく中で何をしないといけないか。)
一つは、「よその国、特に途上国にできること」は避ける
二つ目は、「コンピュータやロボットにできること」は避ける
三つ目に、「反復性のあること」も避ける
当時よりも今の方がより現実感が増していることは誰しもが感じることだろう。東京の都市部の安価な労働力は中国や東アジアの労働力無くしては成り立たず、ほとんどの人は暫くの期間、銀行の窓口を利用したことも無いのではないだろうか。若者にとっては現金を引き出す場所として銀行よりもコンビニのATMの方が身近になっているかも知れない。また最近のSAMSUNGの躍進などを見ると、日本よりも韓国の方がこの辺を意識した動きが早いように思う。
「ハイタッチ」とは、他人と共感する能力、人間関係の機微を感じ取る能力、自ら喜びを見出し、また他の人々が喜びを見つける手助けをする能力、そしてごく日常的な出来事についてもその目的や意義を追求する能力などがある。
『共感』というのが重要なキーワードだと思っている。何もみんながリッツ・カールトンになれ、というのではなく、自分の立場だけではなく、同時に相手の立場で考えられるかどうか、ということであり、それは決して大きなことではない。僕の最近の例で言えば、郵便局で書類を送るために80円切手を購入して、80円を出した。領収書と80円切手を受け取った瞬間に窓口の方は「こちらでお預かりしましょうか」と言われた。その場で切手を貼って、出口の前のポストに入れる手間も大したことはないけど、僕がしたいことをできる範囲で提案してくれたわけである。
豊かな時代では、合理的、論理的、そして機能的な必要に訴えるだけではとうてい利益を上げられない。
多くの場所で『付加価値の高いxxx』というフレーズを聞く。でもほとんどの場合には提供者から見て、『機能が多い=付加価値『』というケースが多い。スポーツの基本フォームや型は美しい上、無駄がない。『何もない≠シンプル』ではないのと同様に、付加価値は利用者の共感が得られなければ付加価値にならない。
こんな調子で書いていたら、原稿用紙10枚ぐらいあっという間に書けてしまうぐらいに内容が密な本。発売当時よりも今の方が多くの人に納得感があるはず。