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知らぬ間に意識改革をさせられていたんだ 『なぜうつ病の人が増えたのか』 冨高辰一郎




"なぜうつ病の人が増えたのか (幻冬舎ルネッサンス新書)" (冨高 辰一郎)


この本は『本が好き!』から献本いただきました。


 


献本をを申し込んだ時、正直に申し上げてあまり期待していなかった。しかし、本書の『はじめに』を読んだ瞬間に予想していたものと内容が違い、そして理路整然と話が展開される感触を得た。過去の経験で、『序章』や『はじめに』の出来が素晴らしい作品は内容も期待を裏切らない。著者は医師というバックグラウンドでありながら優れた分析者であり、事実を積み上げた論理、その裏付け、証明出来ない点を正直に書いている。そしてストーリーも決して退屈させない流れとなっており、これは面白くないはずがない。案の定、開いたその日のうちに時間を忘れて読み切ってしまった。


 


著者 冨高氏の主張は『うつ病が増加した原因は製薬会社のプロモーションに起因している』というもので、その証明をまるで遺跡を発掘するかのように緻密にかつ丁寧に行っている。主張に都合のいい、データだけを並べるのではなく、考えられる範囲はほぼ全面的に調査を行っている。本書の内容とは離れるが、ロジカルな調査方法、分析方法、レポートの仕方に関しても本書は十分参考になる作品である。


冨高氏が本書を書くきっかけになったのは、自身が精神科医として仕事をしている中で「なぜ急激にうつ病が増えているのか?」と疑問に思ったことに起因する。多くの人にこの問いを投げかければこう答えるだろう。



バブル崩壊後の日本経済の停滞、終身雇用の終焉により社会不安が増大した。またグローバル競争の激化、ITの導入、非正規雇用の増加により労働者のストレスが増加した。こういった日本社会の変化を背景として、近年うつ病が増加している」


これは冨高氏が『はじめに』で一般向けにのうつ病の書籍で、うつ病増加の理由についてこう説明していることが多い、と書いている。僕も本書を読むまではこう考えていて、全くの疑いを持たなかった。しかし、調査をしてみると気分障害患者数(うつ病以外にも躁うつ秒などを含むがそのほとんどはうつ病)は1999年から2005年までの間の6年間で2倍以上に増加していることが分かった。そして、急激に増加しているのは1999年から2002年までの間であることが判明。


それだけではなく、街ではメンタルクリニックが増え、有名人が自分がうつ病だと告白することも珍しくなくなってきている。少なくても昭和の時代では精神科の病院に通うことはどちらかと言えばネガティブな印象だった。が、今はそんなことがなく、うつ病の『大衆化』という表現をする精神科医もいるそうである。『大衆化』というのは非常に面白い表現だと思う。


そして、そう仕向けているのが製薬会社である、と言ったら信じますか?


そう言えば、最近は薄毛や抜け毛が気になるなら受診を・・・というCMや広告を頻繁に見ませんか。頷いた方は是非一度、本書を読んでみてください。事実が説明してくれます。