感じるままに 『シャネル&ストラヴィンスキー 』


シャネル&ストラヴィンスキー


この映画のメッセージは何だったのか最後まで分からなかった。じゃ、つまらなかったか?--といえば、そんなことはなく十分に楽しめた映像だった。逆に何かを求めて映像を見るのではなく、見て感じるままに感じればいい、というものなのかも知れない。


まず映像全体が非常にキレイに仕上がっていて、内容に関係なく非常に気持ちよく見ることができる。風景、建物、インテリアそして服、とどれをとっても入念に準備されたことが伺える。アナ・ムグラリスが演じるココ・シャネルは着こなし、振る舞いともに意志の強さを感じる。ストーリーそのものはフィクションなので、そのまま書いても意味がないけど作品中でのココの『妥協しない』姿勢は考えさせられるものがある。自分の中には明確なイメージがあって、そのイメージから外れたものは口を出さずにはいられない。スタッフはビクビクしながらココに質問する場面でも、自分を恐れていることを知りつつも自分からは歩み寄らない。もしこれが本当にココに近いのであれば、この『妥協しない』ことがシャネルの原点なのだろう。


 


もう一人の主人公 イゴールストラヴィンスキーはロシアから亡命した作曲家。彼が作る曲はあまりにも前衛過ぎて観客から受け入れられない。そんな中でシャネルは彼を見定め、数年後に彼に援助することを申し出る。当初、ストラヴィンスキーはシャネルの申し出を断るが、病気の妻や子供たちのことを考え、申し出を受けてココの屋敷に住むことになる。イゴールにとってココの屋敷は曲を創作する環境として申し分ないものの、愛する妻と魅力的なココが同じ屋敷の中にいることに心が揺らぎ出す。気持ちが高ぶれば彼が奏でるピアノにもその心は表れ、妻もその変化に気づく。やがて二人は許されぬ仲になるが、ココの気持ちは情熱的でありながら、どこか冷静な一面を覗かせる。ここでもココの強い意志を感じる。


 


映画を見て何かをくみ取るのではなく、純粋な気持ちで映像と音楽を楽しむ、そんなことを無言で伝えているような気がする。何でも理由やメッセージを探して評するような今の風潮に『待った』をかけるように。




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