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前半/後半でテイストが変わり、夢と現実がクロスオーバーする 『影絵の騎士』 大沢在昌




"影絵の騎士 (集英社文庫)" (大沢 在昌)


過去のエントリーを読んでみると意外とポイントがまとまっていてビックリ(笑)。ちょうど2年半前振りに同じ本を読んだことになる(今回は文庫版だけど)。たった2年半とはいえ、日本でもiPhoneがリリースされ、TVが価値が一段と下がって何となくこの時代に近づいた感じを受ける。ただし、ストーリーの中心となるムービーが再ブームにはなっていないけど・・・(苦笑)。


 


本に関しては過去に書いているので、今回は僕の中でのサイドストーリーというか、この物語の可能性をちょっと考えてみたい。



関連:


[Book]「影絵の騎士」 大沢在昌 2008-02-22


 


最近思うことの一つに、東京都心のコンビニやファーストフード店を運営していくためには外国人の労働力が必須で、かなりの部分で依存しているように見える。(僕の感覚では)時給はそれほど安いわけではないけど、若者にとってもっと割のいい仕事があるのか、この手のバイトはあまり人気がないのか、かなりの店舗で中国系や韓国系のスタッフにあたる。特に深夜の時間帯に近くなればなるほど、その傾向が強くなる。


一方、人が多く集まるターミナル駅だけではなく、小さな駅や住宅街に近い場所にもインド料理やネパール料理店などが進出している。実際に僕も近くのインド料理の店によく行けど、ファミレスなんかよりも安く、美味しく、そしてスタッフ(インド人なのか、ネパール人なのか分からないけど)は一生懸命で夜遅くまで働いている。コンビニやファーストフードの仕事やお国料理を出すことには高度な知識や技術は必要ないけど、彼らがいなければ都市機能が円滑に回らなくなる時期もそうは遠くないような気がする。


 


『影絵の騎士』の前作である『B・D・T』は路上で生まれ育った混血「ホープレス」の世界を描いている。もし現状増え続ける外国人(特にアジア圏の)に対して不利なルールができてしまうと、この世界に向かう可能性が出てくるような気がしてならない。僕は受け皿をしっかりした上で、もっと日本への外国人の流入は多くした方がいいと思っている。


と、ストーリーとは全く関係ないけど、過去にほぼ単一民族で成り立ってきた日本が誤った判断をすると『B・D・T』の世界に向かう可能性がある、ということである。


 


今回改めて読んでみてこの作品の醍醐味は中盤から最後にかけての人の感情の変化に合わせて自分自身がストーリーの中に溶け込んでいくこと。主人公のホープレス私立探偵 ケン、ホープレスからセレブになったヨシオ・石丸、最上級の女優でありヨシオの妻であるアマンダ、そして夢の島を牛耳る権力者たち。それぞれがそれぞれのルールを持ち、人を欺き、人を信じて敵味方に分け、そして自分自身の立場を確立していく。


 




"B・D・T 掟の街 (角川文庫)" (大沢 在昌)


『相手を信じる』ってどういうことか、そのための会話のやり取りを読みながら、『自分だったら・・・』と完全に大沢ワールドに引き込まれている。単行本で出版された時よりも今の方が時代の変化も相まって楽しめるんじゃないかな。『B・D・T』の続編だから、できれば『B・D・T』を先に読んでいた方がいいけど、『影絵の騎士』単体でも十分に楽しめます。そこはベテラン大沢在昌氏は抜かりない。