『情熱大陸』にみるスガシカオの素顔


"情熱大陸×スガ シカオ [DVD]" (ジェネオン エンタテインメント)


スガシカオは好きなミュージシャンの一人。歳が一緒だからかは別にして、自然体でありながらプロらしさをすごく感じる。2001年に『情熱大陸』で放映されたスガシカオの回がDVDになっていたので今更だけど見てみた。


当時35歳のスガシカオは『夜空のムコウ』のヒットの後で多くの人に知られるようになっていた。しかし、映像から伝わる彼の雰囲気はどこにでもいる普通の人の感じ。番組のリクエストは10日間の密着取材の期間で曲を1曲仕上げること。ちょうどFM局(J-WAVE)からクリスマスに意識した曲を書いて欲しい、という依頼も受けていた時期だったので、その曲をやりましょう、という企画。ツアーの最中では無いものの、レギュラーのラジオ番組に出演し、他のラジオへのゲスト出演、TVの撮影と決して時間的に余裕があるわけではないのに、曲も詞も真っ新な状態から作らなければならない。そんな約束を彼は引き受ける。番組のディレクターは『出来ました?』と聞くけれど、『出来るわけないでしょう。昨日もずっと一緒だったじゃないの』と答える。でも、作りきり、最後は屋上での一人ライブを実現した。曲は『Cloudy』。


レコーディングスタジオでメロディに対して詞の文字数が多く、試行錯誤しながらも『ここだけは譲れない』と歌いきってしまうスガシカオ。言い回しを変えればきれいに収まるにも関わらず、微妙なニュアンスをキープしたいがために妥協しない。


 


子供時代を過ごした街の団子屋でも会話にはスガの素顔をのぞかせる。相手に知ってもらうため『夜空のムコウ』を書いたのは自分だと話すシーンは自慢ではなく、相手にも分かってもらうための例を引き出したに過ぎない。そう、スガのアクションは自分中心ではなく、相手がどう思うかという前提に立っている。ラジオで何を話したら、相手が喜んでくれるか。


 


音楽は生活必需品ではないけど、決して無くなることはないだろう。でもアーティスト、ミュージシャンとして残れるかどうかは別の話。残れるミュージシャンは『たくさんの人を喜ばせることが出来る人』。テクニックではなく、相手側に立って最大限の努力する。そんなスガシカオの素顔がよく出ている作品だと思う。


 


もう夏も終盤。だからこそ、この曲を聴きたいね。