孤独との対峙 『バニラ・スカイ』


"バニラ・スカイ スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]" (キャメロン・クロウ)


なぜかこの映画が気になって見てしまった。きっとこの間、『マイノリティ・リポート』を見たからだろう。内容もあらすじも知らず手にしてみたが、こういう時の勘は素晴らしいものがあって、この映画は見方を変えると『ブレードランナー』や『マイノリティ・リポート』のようなSF映画に見える。表面的にはペネロペ・クルスキャメロン・ディアスを登場させ、金持ちのトム・クルーズとの恋愛映画に見えるが伝えたかったのはそうではないだろう。


 


映画のストーリーとは違う観点で考えてみよう。結局のところ、トム・クルーズ演じるデヴィッド・エイムスの心は亡き母親への思いに支配されているんだろう。一代で出版界の帝王になった父には尊敬の念を持ちつつも、彼自身の心のベースは優しかった母、そしてその母親からの愛を十分に受けきれずにこの世を去ってしまった事実を心のどこかで未だに受け入れていないのではないか、と感じる。それが女性に対する態度に出たり、ソフィアに惹かれるデヴィッドを通して表現したかったのではないか。容姿、資産、社会的立場のどれをとっても得難いものを手に入れていた環境にいながら『孤独』と背中合わせにいた。映画を見終わった後にいろいろなレビューを読んでみたところ、この『孤独』は一つのテーマになっていそうだが、決して事故の後に『孤独』を感じたわけではなく最愛の母、尊敬する父を失った時から『孤独』を感じ続けていたんだろう。


 


映画ではLE社が開発した冷凍保存技術による延命(?)措置の契約にサインしたもの、デヴィッドが心の奥底で感じていた母の死を受け入れていない部分に起因しているのではないだろうか。幸いにも僕の場合には自分の両親も奥さんの両親も健在なので、想像でしかないのだけれども。


 


話は全然違うのだが、トム・クルーズの演技は好きな方で、特に子供のように微笑む姿には同姓でありながらすごく惹かれるものがある。この笑顔はどの映画を見ても登場し、役に関係なくトム・クルーズ色にしてしまう要因の一つなんだろう。もう一度、彼の作品を見直してみることにしよう。