惜しい!バックグランドを描ければもっといいのに 『ジュリー&ジュリア』


"ジュリー&ジュリア [Blu-ray]" (ノーラ・エフロン)


実はこの作品は本の方を先に購入してあって、今でも本棚で『未読』状態を続けている。本の方も映画がきっかけだったわけじゃなく、食べ物キーワードの本を何冊かまとめて購入した時の一冊のこの『ジュリー&ジュリア』だったわけ。結局、映像の方を先に観ることになったけど。


 


映画の方はパリで引っ越したジュリアは友人と共同で英語で書かれたフランス料理の本を出版するストーリーとニューヨークでOLをしながらジュリアが書いた本を実際に作りながらブログにアップしていくストーリーが並行して進んでいく。でも、映画の中ではそれぞれの事情が抽象的に描かれているので、なんとなくそれぞれのサクセスストーリーとして描かれて終わってしまう感じになっている。本当に描かなきゃいけない部分は違う気がするんだけど・・・。


2002年にジュリーが始めた『THE JULIE/JULIA PROJECT』という名のブログは昼間フルタイムの仕事をしながらストレスフルな毎日を送り、これといった生きる目的がないまま過ごしていた中で出会ったセルフプロジェクト。時代はまだまだブログが黎明期だったことだろう。なかなか決心したことを続けられないジュリーの性格でもブログを続けられたのは、少ないながらもブログにコメント付けてくれるファンがいること。時には材料を提供してくれたり、日々の一喜一憂を一緒に反応してくる同僚。これまで生きる目的が見いだせないでいたジュリーにとって『生きる証』を感じさせてくる現象がブログで生まれたわけである。


映画の中でも映像としてはその辺もカバーされているんだけど、なぜかスルーされている感じを受ける。事実を上手に映像化しているんだけど、伝えたかった『思い』が薄いというか、『誰に』、『何を』が曖昧な気がする。映像的には申し分ないのに、非常にもったいない気がする。


 


そう考えると、この映像の価値を高めるには一緒に原作も読むことをお薦めする。僕も『積読』状態だけど、全く目を通していないわけじゃなく、途中までは読んでいるので作品の真意は理解しているつもり。もし読んでいなかったら、『つまらない映画』で終わったしまったことだろう。そう考えると、先に原作を読んで、次の映画の流れがいいかな。