何を伝えたいのか分からない記事



クジラの街・太地町住民の毛髪から高濃度水銀


 環境省の国立水俣病総合研究センターは9日、クジラやイルカを食べる習慣がある和歌山県太地町の全住民の3割にあたる1137人を調査し、全国の他地域と比べて平均で4倍超の水銀濃度を毛髪から検出したと発表した。


 水銀中毒の可能性を疑わせる症状はみられなかったが、うち43人は世界保健機関(WHO)の基準値50ppmを超えていた。


読売新聞 2010-05-10


 


読売新聞でこの記事を読んだ時に非常に違和感を感じた。先日のmixbeatのワークショップじゃないけど、記事として考えると不完全な感じがする。まず主張の結論というか、目的があいまいである。


和歌山県太地町住民の毛髪から検出された水銀量が他の地域の平均と比較して大幅に高い値だった。


  • その値はWHOが示す基準値を43人が超えていた。

  • 太地町は捕鯨発祥の地で、他の地域に比べてクジラ類の摂取が多い。

  • しかし、水銀による悪影響はでていない。

  • 調査をした国立水俣総合研究センターはクジラ類の摂取状況と毛髪水銀濃度に相関があると結論づけた。


以上は事実であるが、それに伴う意見や結論らしきものは言及されていない。では、何のためにこの記事が掲載されたのかがよく分からない。ネットの記事だと分からないが、実際の新聞ではそれなりの扱いだったことを考えると新聞社としては重要な記事として判断したと言えよう。しかし、新聞社としての意見がないとなると反捕鯨のプロパガンダとしての記事と勘ぐりたくなる。


 


水俣病をはじめとする水銀の人体に与える悪影響はみんなが知っていることだと思うけど、どれぐらいの量が中毒症状を引き起こすポイントなのか、初期症状としてどのような状態になり、気にしなければならない症状とはなにか、環境省や町はどのような指示を出したのかなど、この事実を知った読み手が感じる知りたい結果が何も書かれていない。


調査レポートが今回の主題というならば、調査結果が平均値、最小値、最大値の表記だけでは片手落ちで、それらの分布がどうだったのかが重要なはずである。男女で分けているが、男女で分ける何かしらの意味が本当にあったのだろうか。逆に(クジラ類を摂取する)食生活に関係があるとすれば、世代や家族構成、職業による違いの方が明確になるのではないか。なんとも胡散臭い記事である。