こういう本こそ電子書籍で読みたい 『アップル、グーグル、マイクロソフト』 岡嶋裕史


"アップル、グーグル、マイクロソフト クラウド、携帯端末戦争のゆくえ (光文社新書)" (岡嶋 裕史)


最初に結論を言うと、《僕にとっては》目新しい内容は何一つありませんでした。普段からこの辺の情報に対してアンテナを張っていれば特別に入手するのが難しい情報ではなく、何か特別な取材をしているわけではないのでWeb上にある情報である。じゃ、価値が無いのかというとそういうことではない。


Webのような玉石混淆の情報の中から必要な情報だけを見つけ出し、同じ目線でまとめるにはそれなりの時間と知識が必要になるが、この本はそれらを代わりにやってくれている。そしてキーになる企業の戦略を分かりやすい言葉に置き換え、特徴付けているところに価値がある。仕事でクラウド関連の各社の取り組みをまとめるように指示されたような場合には、そっくりそのまま流用すれば事足りるぐらいになっている。


 


一方、新書として発行されたことを考えると僕はちょっと違った見方がしている。最近の新書はよく調査されて書き下ろされた作品から今回のような既存の情報の再編成で出版されるものまでレベルに大きな差がある。その割りには値段が同じような値段が付けられている。いっそのこと、このような再編成本は電子書籍として、もっと時間を掛けずにリリースすべき、というのが感想である。特に今回は3つの企業の戦略を展開しているので、各企業ごとにまとめに対して課金するようなリリースをしてマネタイズする方法も採れるだろう。


 


唯一表現の仕方で感心したのはマイクロソフトの戦略を『タンス預金』と『銀行預金』にたとえて説明しているところである。つまりこれまでのマイクロソフトはOSやオフィスというアプリケーションという『金庫』を売りまくっていた、と表現し、アズールは銀行で、家の金庫と銀行の口座を上手に使いましょう、というのがマイクロソフトクラウド戦略であるとまとめている。


この手の本はiPhoneで通勤時に読んで、必要な部分はその場でクリッピングできるような時代に早くなって欲しい。