信用できない世界での信頼 『007 慰めの報酬』

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もう一度『007 慰めの報酬』を観てみた。なるほど、以前の話(『007 カジノ・ロワイヤル)』を理解した上で観ると感じ方が違ってくる。ジェームズとMとの会話もそうだし、ジェームズがいろいろな人に質問された時の答えの意味ももっと深い意味で理解できた。


映画だけの話ではなく、原作レベルでも前作の『007 カジノ・ロワイヤル』が最初の作品で、この『007 慰めの報酬(Quantum of Solace)』は短編集に収められた一つという位置づけを知っているかどうか非常に重要だ。


"007 / 慰めの報酬 (2枚組特別編) 〔初回生産限定〕 [DVD]" (マーク・フォースター)


 


僕が気に入っている007シリーズのいいところは、


  • 映像がキレイである


今回の作品でも英国、イタリア、ハイチ、オーストリアなど世界各地を渡り歩き、それぞれの場所の特徴的な部分を上手に映像に盛り込んでいる。冒頭シーンではどうしてもカーチェイスに目がいきがちだが、落ち着いて観るとバックの映像が素晴らしいことにも気付く。一方で、ボロボロになったアストンマーティンには『もったいないww』と思ってしまう。


  • 原作のモチーフを利用しながらも現代に合わせたシナリオになっている


原作者のイアン・フレミングが007シリーズを世に出したのは1950年代-1960年代。当然、世界情勢も技術力も違う。そこでモチーフは生かしつつ、現代に合わせたシナリオにしている。たとえば、『007 カジノ・ロワイヤル』の1シーンのセリフでは『9.11』の時にテロリストが株で儲けた手段と同じ手法をル・シッフルが使おうとして阻止される。『007 慰めの報酬』では情報検索と通信を組み合わせた仕組みがキーボードやマウス操作ではなく、音声認識やフィンガー・インターフェースでオペレーションしている。50-60年前であればSFの世界だったものが、今ではほぼ実現可能な領域に達している。話は逸れるが、かつてのSF小説に描かれている技術やツールはある意味『夢』でもあるので、技術革新の目標でもあり、特にコンピュータ技術を利用した部分ではかなりの『夢』が現実になりつつある。

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  • 『信用』と『信頼』


誰も信用できないスパイの世界で、そういう世界だからこそ生まれる信頼もある。ジェームズとMだったり、ジェームズとフィリックスだったり。


 


派手なアクションシーンとボンドガール、ボンドカーなどが話題になりがちだけど、実は深い楽しみ方があるのが007シリーズだということが分かった。小説も読んでみようかな・・・。