誰も信用できない世界で戦わなければいけない 『007 カジノ・ロワイヤル』


"007 カジノ・ロワイヤル デラックス・コレクターズ・エディション(2枚組) [DVD]" (マーティン・キャンベル)


実はこのブログに書いたつもりが書いてなかった。『007 慰めの報酬』を観て今までにない感触だったので、この前作の『007 カジノ・ロワイヤル』を観ることにした。随分と昔はこの『007』(ゼロ・ゼロ・セブンじゃなく、ダブル・オー・セブン)をロードショーで観たけどあまり面白いと思わなかった。が、『007 慰めの報酬』は全く違っていた。きっとこれまでの経験がようやく『面白い!』と思うような蓄積量に達したからかも知れない。それと、ボンド役のダニエル・クレイグは僕の中で小説のイメージにかなり近い。受け答えは軽いけど決して心を開かない、皮肉混じりのジョークをいう。『ミッション・インポッシブル』のトム・クルーズが米国らしいのと対象的な感じがする。そして何よりも、愛車が『アストンマーティン』というのがいい。フェラーリでもポルシェでもない(そういえば、この間はマセラティのことを書いたな)、クルマだけどもう芸術品でしょうアストンマーティンは。


 


この『007 カジノ・ロワイヤル』は小説でも最初の作品なんですね。だからジェームズも『00』(ダブル・オー)に昇格したばかりの時間軸になっている。英国情報部 MI6の諜報部員で殺人もOK、というのがこの『00』の称号。テロ組織の資金を運用しているル・シッフルの株価操作を阻止し、その穴埋めのイベントであるカジノ・ロワイヤルでのポーカーゲームに参加し、ル・シッフルの資金回収を潰すのがこのミッション。情報部で一番ポーカーがうまい、という理由からジェームズが抜擢されるのもちょっと皮肉っぽい。『ポーカーは心理戦』という持論を持つジェームズがル・シッフルのクセを見抜いてもそこには裏切りものがいて、簡単にはことが運ばない。誰も信用できない状況の中でベストな答えを見つけなければ、そこにあるのは『死』のみ。誰にも素性を見せることができなく、誰を信用していいのかも自分の価値基準で判断するしかない。いつのまにか、『自分だったら、こんな判断ができるか』と感情移入している。こうなったらとことんのめり込むしかしかない。


もう一つの見所は『M』との関係。上司でありながら、どこか母親のような優しさを感じ、ジェームズの破天荒な行動のもみ消しもやってのける。でも100%は信用していない。『007』はいつも孤独なんだろう。