本の電子化とビジネスの変化 「日刊徒然音声雑記」を聴きながら



[file-481]電子出版プロデュースの肝は「Social media presence(ソーシャルメディア・プレゼンス)」- 新しい書籍のカタチ(52) 2010/03/7 日刊徒然音声雑記


 


毎日のようにPodcastを配信している境さんの話はいつも通勤の電車の中で聴いている。僕自身も通常の本をはじめ、境さんが紹介されるサービスやいろいろなタイプの電子書籍を試してみている。特にこの日の話は『マーケティング』視点で見ても興味深かったので僕なりにまとめてみることにする。


 


まず冒頭に出てくる『対象となる読者』というキーワードにフォーカスしてみたい。これまでの本当違い、電子書籍の場合にはそれを読むためのデバイスが必要である。ケータイであったり、スマートフォンiPhoneAndroidなど)であったり、PC、あるいはこれからリリースされるiPadかも知れない。これはある意味、出版社が『どんなデバイスをターゲット』するかでフォーマット、価格、プロモーションが違ってくる。例えば、iPhoneに最適化された形でリリースした場合、すべての人がiPhoneを持っているわけではないので、iPhoneを持っている人に向けてプロモーションする必要がある。またiPhoneのアプリは基本的にAppStoreで購入するため、コストベースの価格設定ではなく、AppStoreに出した時にiPhoneユーザが『馴染む』価格でなければ販売数は限られる。ただし、PC向けとは違って持ち運びが容易なデバイスなので読者側から見ると利便性は高いだろう。感覚は文庫本や新書のような感じだろうか。しかし、コンパクトであるということは画面サイズが限られているわけで、向き/不向きな作品がある。この辺は『ターゲット』、『書籍の内容』などを加味しながら慎重に考えなければいけないだろう。


 


プロモーションという部分もこれまでとは確実に違ってくる。(僕は好きなんだけど)電車の中吊りや新聞の5段広告ではなく、境さんがおっしゃるようにWebサイトやソーシャルネットワークをどう活用していくか、に重点が置かれる。ターゲットがiPhoneユーザであれば、PCやMacを持っていることが前提のため、気になるものは確実に検索され、その時に対象のサイトが無いものはまず信用されない。またTwitterや書籍に関するソーシャルメディアなどでどう評価されているかもチェックの対象だろう。逆にソーシャルメディアなどで取り上げられない作品はきっとスルーされる。つまり、これまでのマス中心のプロモーションから、ソーシャルメディアがコアにあり、マスが補完するような戦略が必要になってくる。


 


そして、これまでの編集者だけではなく、この辺のプロモーションも含めてコーディネートできる専門家が必要になってくる。メディアとして、電子書籍だけでいくのか、従来の本も出版するのか、数はどうするのか、それぞれメディア別の値付けをどうするのか、ターゲットデバイス/フォーマットはどこまでサポートするのか、プロモーションの仕掛けやタイミングはどうかなど考えなければいけないことは山積みだと思う。流行の『フリーミアム』で話題になっても利益を上げられなければ只の『フリーペーパー』になってしまう。出版部分だけはなく、この辺のプロデュースは面白い分野だと思う。